小児科 すこやかアレルギークリニック

病院からのお知らせ

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エピペンを使用できるのは
2011/06/17
昨日も触れたように、エピペンはアナフィラキシー時に有効な治療法です。

エピペンは、もともと林業にたずさわる方が蜂に刺され、アナフィラキシーショックを起こし、間に合わずに死亡してしまうケースが多かったため、その対応策として導入されました。

何年も前の日本アレルギー学会で、エピペン導入を契機に、蜂によるアナフィラキシーショック死は激減したと報告されていました。アナフィラキシーショックは食物アレルギーでも起こりますので、食物アレルギーにも適応が広がったと聞いています。

エピペンには0.15mgと0.3mgの2つの規格があり、15kg〜30kgが0.15mg、30kg以上が0.3mgを使うことになっています。ただ、食物アレルギーは乳幼児に頻度が高いため、重症だけれど、15kg未満の子には処方できないことになります。海外では15kgに満たなくても、処方されるケースがあるようです。

基本的に、アナフィラキシー時にエピペンを打てるのは、本人と保護者ということになっています。特に幼児や小学校低学年であれば、本人が打つことはまず無理でしょう。また、打てる年齢であったとしても、ショック状態で意識消失していれば、打つことなんて不可能です。

仮に危険な状態であっても、親御さんが駆けつけるまでは、何もできないことになっていたのですが、2009年に救急救命士も打てるようになりました。

当然、救急要請があれば救急車で患者さんのもとに駆けつけることになるのですが、あいにく救急車にはエピペンは搭載されていません。エピペンは使用期限が1年間であり、患者さんが1年間無事に何事も起きなくても、使用期限が切れれば、新しいものに買い直さなければいけません。全ての救急車に0.15mgと0.3mgの2種類のエピペンを搭載し、更に1年ごとに更新となると予算的に厳しいと聞いています。救急救命士は、患者さん本人に処方されたエピペンを使うことになります。

エピペンを使うと、症状が改善されることが多いのですが、症状が重かった場合は、私の経験上、一旦改善してもまた悪化することもあります。2度打たなければならないこともあるのです。また、接種のタイミングが遅れると、著効しない場合もあります。正直、私も“適切”なタイミングって難しいなと思っています。とりあえず言えることは、“早め”に打つことなのでしょう。

アメリカやカナダでは気軽(?)に処方されているようですが、日本ではエピペンの講習を受けた医師でないと処方できない決まりになっており、新潟県で小児科医で処方できる人は相当限られています。

今年の3月に「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」が公表されました。これは学校における「学校生活管理指導表」のアレルギー疾患用の幼稚園、保育園バージョンです。学校生活管理指導表で、学校の先生でもエピペンの使用が人道上、許されることになっています。

今回の「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」のQ&Aでも、保育士のエピペンの使用が許可する旨が書かれています。食物アレルギーの幼児は多いため、園の先生方もエピペンの使用を含め、食物アレルギーへの理解を深めておく必要があると思います。

当院でも、それらを院内勉強会で取り上げていくつもりです。ホームページで告知しますので、一緒に学んでいきたいと思っています。

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