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「この差って何ですか?」というテレビ番組があります。
毎回見ている訳ではないですが、見れば「なるほど〜」って思うことも多く、勉強になります。
先日、「食物アレルギーの診療の手引き2017」という食物アレルギーのガイドラインの一種を見ていたら、こんな図がありました(画像)。
今回の改訂の肝は、総負荷量を「少量」、「中等量」、「日常摂取量」の3段階に分けて、負荷試験をすることですが、負荷試験の結果に基づいた栄養指導を示したものが、これになります。
一番頻度の多い卵アレルギーでみると、鶏卵の場合の「少量」とは卵黄1個ないし加熱全卵1/32と書かれています。私の認識では、卵黄1個と加熱全卵1/32では大きな差があるのですが、どう使い分けるかの記載はないようです。
今回提示した図を見て欲しいのですが、それで負荷試験をして、陽性なら「改善除去」と書かれています。ピンクの四角のところです。
これって、私の感覚からすると、少々乱暴だと思うのです。卵黄1個を食べられなければ、かなり重症だと思いますが、1/32個を食べられなくてもさほど重症だとは思いません。
なるべく食べさせるべきで、食べるものもあるのに「完全除去」なのだそうです。当院が行っている卵クッキーの負荷試験は、1/32個よりも下に当たると思います。つまり、ガイドライン通りにやる施設では「完全除去」なのに、当院では食べさせていることになります。しかも、美味しく食べてもらっています。
何かあきらめが早いというか、画一的というか。そもそも食物アレルギーは「少量」とくくること自体が間違っているのかもしれません。
医者が「少量」と思っているだけで、その患者さんにとっては「大量」だから、症状を起こすのではないでしょうか?。症状を起こさない「微量」でもいいから、食べさせることが重要だと考えています。
食物アレルギーに関しては、かなりこだわって診療していますし、根底にあるのは「ほんのちょっとでもいいから食べさせてあげたい」という気持ちです。
ガイドラインにケンカを売るつもりはないですが、医者が勝手に「少量」と言っているだけで、とても重症な患者さんにとっては、「少量」ではなく、“危険な量”だったりするということを忘れていけないと思っています。
当院なら、卵黄1個や加熱全卵1/32を食べて症状が出たとしても、完全除去にはしていません。「完全除去」という言葉は、医師が白旗を挙げるという意味で、そうは言いたくないからです。
冒頭に「この差って何ですか?」という番組タイトルを書きましたが、「完全除去」と「微量でも食べさせる」ということは、患者さん側からしても月とスッポンほどの差があると思っているから、そうやっているのです。
患者さんに見合った量を真剣に考え、その患者さんに合った負荷試験をやることが求められているのではないでしょうか?。 |