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白旗
2018/05/14
昨日も「ブラックペアン」やっていましたね。

医療系ドラマです。少し前にも書きましたが、外科のトップを巡り、2人の大学教授がインパクトファクターでしのぎを削っています。インパクトファクターとは、いかにより格の高い論文に複数載るかどうかで、累計された数字で表されます。

医療界の生々しさの一面を、うまく表現しているのかなと思っています。医者の世界って、覇権争いとか、金を巡る問題とか結構ありますよ。患者さんのための医療とは、関係ない部分で医者同士がやりあっています。

これも数日前に触れましたが、アレルギーの「拠点病院」もそうです。都会では候補となる施設が複数ありますので、手を挙げる施設が少なくなかったといいます。拠点病院に選ばれると選ばれないのでは、プライドや収益面で大きな差でしょうから、覇権争いがあったようです。

それは都会だけであって、地方では候補を挙げることさえ難しいようです。アレルギーに限らないでしょうが、医療って地域間格差ってとても大きいようです。

私は、そうはならないように開業医という立場であっても、大病院並みのレベルの医療を提供したいと考えていますが、そういう良い意味でのプライドを持った開業医も非常に少ないようです。楽して儲かる訳ですから、そのシステムが多くの開業医からハングリー精神を奪っているように感じています。

大病院というか、専門病院は専門病院間でしのぎを削っている訳ですが、最近はそうでもないようです。

日本の第一人者の先生が、ある学会でいきなりこんなことを言ったので、驚きました。「成育はアレルギーだけやっていればよく、我々は一般小児科も診ており、大変なんだ」という内容でした。成育とは、成育医療研究センターのことを指します。

この場でも書いているように、成育の行っている研究や論文はどれも素晴らしいものです。アトピー性皮膚炎のリスクの高い赤ちゃんに生後まもなくから保湿剤を塗り続けると、アトピー性皮膚炎の発症を3割減らすことができたとか、アトピー性皮膚炎の4、5か月児に皮膚治療をしっかり行った上で、生後6か月から卵を少量食べさせ続けることで卵アレルギーの発症を8割減らすことができたというものです。

つい先月も、乳幼児期に抗生物質を使うことで、アレルギーの発症が1.7倍に増えるというのも成育医療研究センターのものです。

最近の有名な研究の多くが成育からのもので、某先生のように負け惜しみを言いたくなる気持ちも分かります。ただ、日本のアレルギーを支えているような先生の言う言葉ではないし、聞きたくなかったと思っています。

当院では、卵アレルギーの発症予防が打ち出された訳ですから、早速取り入れています。いや、もっと早くから対応したいと考えています。要は、超早期からアトピー性皮膚炎を治療し、経皮感作さえさせないようにしたいと考えるのは、当然の成りゆきかと思っています。

別の第一人者の先生が、「経皮感作を抑えるような皮膚治療は成育にしかできない」というようなことをある会で言っていたようです。同じアレルギーをやっている小児科医なんですから、「自分にもできないはずはない」とは考えないようなのです。

もうライバルである専門病院は、成育医療研究センターの白旗を挙げている状態のようです。

確かに、成育の大矢先生の着眼点は天才的で、他に類を見ないと思っています。ただ、食物アレルギーが経皮感作によって起こることが分かってきて以来、いろいろな疑問点があり、それを解明しているだけであって、大矢先生の根底には「アレルギーを治したい、克服したい」という思いのままに、研究をされているだけだと思うのです。

日本のアレルギーの問題点の一つは、成育のライバルが出てこないということなのだろうと思っています。

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