小児科 すこやかアレルギークリニック

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先進的
2018/05/16
食物アレルギーの分野は、長年一生懸命やっているといろんなことが見えてきます。

私が医者になった頃は、とにかく除去と言われていたし、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーはただ単に合併しているだけで、アトピー性皮膚炎の治療も弱いステロイドを薄く塗って、すぐに止めるというのがスタンダードだったと思います。

今の私のやっていることからすると、隔世の感がありますが、こう書くと、いまだにこの通りのことをやっている小児科医、皮膚科医が少なくないことに気づきます。

医者って取り扱う病気が多いので、医者によって興味ある分野とそうでない分野はどうしても出てきます。小児科医、皮膚科医にとって、“アレルギーは面倒くさい、効率が悪い、一生懸命やっても儲からない”分野のようです。

関心もないため、「こんなものだろう」と思って、勉強もしない、改善がなくても専門医に紹介もしない。サイテーな医者が多いことが分かりますね。

そんなアレルギーの分野ですが、私は面白くて、興味があって仕方ないんです。若い頃は、あれもこれも食べるなだったし、皮膚も効かないようなステロイド軟膏を塗るように指導していました。

改善しない様子に無力感を感じていたものです。ただ、時代が追いついていなかった訳です。それが「茶のしずく石鹸」騒動も大きな転換点となりました。「経皮感作」という発想が突如現れて、アトピー性皮膚炎を治療することで予防できるかもしれないと話が進んできたものですから、これなら自分でも何とかできそうと考え、試行錯誤をしているところです。

数日前も、いま食物アレルギーで素晴らしい研究をしているのは成育医療研究センターの他にないと書きました。ライバルに当たる専門病院も、多分悔しがって見ていることだと思っています。

学会に参加すると、先進的な発表は成育医療研究センターからだけで、他の施設からは負荷試験をやったらこんな結果でしたというようなやや物足りない発表が繰り返されているように感じています。私が先進的な方に目が行っているからだと思いますが、ちょっと他は停滞しているように思っています。

2月に食物アレルギーの学会がありました。あくまで私の見方ですが、先進的な発表は浜松の川田先生と私だけだったように感じました。

負荷試験は、例えば食材をちょっと食べさせて、何ともなければ増やして食べさせて、最終的に全部を食べさせる格好です。20分なり30分間隔で増やしていきますが、途中で症状が出たとします。

それが増やしていく途中で症状が出たのか、それとも最初に食べさせたものが時間がかかって出てきたのかの判断が難しいと思います。それをハッキリさせるには、「単回負荷」といって1回食べさせて、時間を掛けて観察するという方法もあります。

この方法はまだ一般的ではなく、川田先生が行っており、その成果を発表されていました。アナフィラキシーも起きないようで、注目の方法だと思っています。

私は、経皮感作は早いと生後1、2か月、3割が生後3か月で起きていることをつきとめ、予防するには早期に対応しなければならないと話してきました。一般的にアトピー性皮膚炎の診断基準は、2か月間経過観察し、慢性の経過を辿ることを確認する必要があるのですが、それでは間に合わないことも強調しました。

また、早期にアトピー性皮膚炎の治療をすると、既に卵が感作を受けていても、例えば卵がクラス3だったのが、2に低下することも経験します。年齢が長じると、皮膚治療しても低下しなかったりします。早期のアトピー性皮膚炎治療をしっかり行うことが肝要だとも言いました。かなり大事なポイントを包み隠さず、発表してきたつもりです。

このように先進的な発表が開業医2人からだけと感じてしまった訳ですが、食物アレルギーの分野、もっと他施設にも頑張ってもらわないとと思っています。

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