現在、食物アレルギーは重症者には「経口免疫療法」を行うが、研究段階の治療法であるため、ごく一部の専門病院で行うべきとされています。 経口免疫療法は、当院のような開業医では、夜間の対応ができないため、行うべきではないと考えています。ところが、昨日、アナフィラキシーの経験があり、エピペンまで処方している10代の患者さんに卵焼きを3/8食べさせているという話をしました。 当院のやり方はこうです。卵クッキーで負荷試験をした場合、問題なく3枚食べられることが多いのですが、今回の患者さんは途中で食べたくないと言い、腹痛も伴ったため、食べられることを確認できた量の範囲内で、自宅でも摂ってもらう指導をしました。 このように負荷試験で食べられることが分かった範囲内で食べることを「食事療法」と言います。つまり、当院は食事療法しかやっていないのです。 卵の入ったラーメンなどを食べてもらい、カステラで負荷試験をし、やはり食べられる量を新たに設定し、食べさせて、最終的に卵焼きに至りました。家庭で、食べさせる量を増やしていく「経口免疫療法」には危険が伴うため、「食事療法」で対応しているという格好です。 「経口免疫療法」と「食事療法」は似ており、厳密に線は引きにくいのだろうと思っています。学会は「経口免疫療法」は行うなぐらいの言い方をしていますので、当院は、負荷試験を行った上で、“食べられる量”を決めて食べさせており、ルールに沿っていると言えると思っています。実は、「食事療法」だけで、かなりの重症にも対応できるという手応えは持っています。 この場でも時々出てくる、プチスタディというものがあります。4、5か月の赤ちゃんのアトピー性皮膚炎をしっかり治療した上で、生後6か月から卵を少量継続的に食べさせ、1歳の時点での卵アレルギーを8割減らすことができたという素晴らしい研究です。 これは、1歳の時点で卵1/2個を用いて負荷試験を行っています。それで卵アレルギーの有無を見ているのですが、食物アレルギー診療ガイドラインによれば、卵1個を食べさせると書いてあります。 厳密にいえば、卵を1/2個ではなく、1個まるまるを使わなければならなかったのだろうと思います。卵1個ですから2倍の量に当たりますが、これを食べさせて、症状が出てしまえば、8割減らせたという結論がもっと変わったものになったかもしれません。誰もそこをツッコミませんが、本当ならそうですよね?。 食物アレルギーの分野には、まだまだ曖昧な部分があるし、多いのだろうと思っています。 その曖昧さは、食物アレルギーの原則として、食べれば治る方向に作用するということによるのだろうと考えています。 |
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