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証拠
2018/11/17

今の医療に足りないのは、“証拠”ではないでしょうか?。

日進月歩と言えば、「医学」という言葉が浮かんでくる方も多いと思います。確かに医療の世界にいて、日進月歩を実感できることもあります。

医療の世界では、これまでの経験や勘に頼ったものから、医学的根拠がなければ信用に足るか検討が必要という“証拠(エビデンス)”が重視される時代です。

実は、先日も夜間救急の仕事をしていて、ある小児科で風邪と診断されていたのだけれど、ぜんそく発作で病院に入院したという親御さんがいらっしゃいました。受診されたのは弟さんでしたが、咳が出て苦しそうで、兄がぜんそくの症状が出た時と似ているということで、夜間診療所を受診されたという訳です。

泣いていて、聴診は難しかったのですが、酸素の取り込みは低下しているようです。落ち着かせて、泣き止ませて聴診したら、ゼーゼー言っていました。

この状況では、兄弟ともにぜんそくがあるのを、主治医が風邪と決めつけて、見逃していたということになると思います。ぜんそくは、急に出るものではなく、しかもいきなり入院とはならないはずですし、風邪を引いた時などにぜんそくの兆候はあったはずです。しかも兄弟2人とも見逃していたなんて...。

「そんなの許せない」と思った方、小児科開業医なんてこんなものですよ。「咳」をしていれば、躊躇なく「風邪」と診断している医者は大勢います。“風邪薬”を処方して、改善がなければ、「風邪じゃないではないか?」と考えて欲しいのですが、もう「風邪」と思っているので、多くの場合、修正が利かないのです。

今年は、10年に1度くらいのぜんそく発作を起こしやすい「秋」だと考えています。こんな「秋」はなかなか経験しません。以前も書きましたが、2年振り、3年振り、5年振り、極めつけは7年振りにぜんそく症状で受診されている患者さんが目につきます。

その中に、以前当院で診ていたぜんそくの高校生がいました。よくある話でしょうが、高校生くらいになると本人も小児科なんて来たくないし、親も待つ時間が惜しく、近間の内科で済まそうとするものだと思います。

内科医から風邪と言われ、激しい咳が改善ないため、来るのが嫌だったかもしれませんが、当院を久し振りに受診されました。

私は、「ぜんそくだろうな」と予想していました。上記のような特別な「秋」だからです。これまでは、ぜんそくの状態はさほど悪くなく、“風邪薬”で何とか切り抜けていたのかもしれませんが、ぜんそくが治っていなんだよという“証拠”を示さなければなりません。

そこで、「呼吸機能検査」を実施しました。アレルギーのプロしか行わない検査です。上に前、後と書いてありますが、まず検査を行い、気管支拡張薬の吸入をして、もう一度呼吸機能検査を行い、比較しようと考えました。

下の三角形の図が、下にえぐれているものが、吸入後には上にふっくらしているのが分かります。V50という項目は前で71%、後で95%まで回復しています。つまり、吸入前は気管支が狭く、息苦しい状況が、気管支拡張効果で気管支が開き、楽になっていることが証明できました。

これまでは、親御さんも医者の言うように安易に“風邪”と考えていたようですが、ぜんそくが起きている“証拠”を示せたと思っています。

しばらくは、当院にまた通い、治療を継続してもらえるものと思います。こういう“証拠”を示すには手間がかかります。多くの開業医が手間やコストを嫌がります。手に負えなくても、紹介すらしようとしません。

これが巷の医療だということを覚えておいていただきたいと思っています。

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