小児科 すこやかアレルギークリニック

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作戦ミス
2018/11/19
学会側は、食物負荷試験は危険な場合もあり、開業医は行うべきではないと言っています。

患者さんが大勢つめかけて、時間もないでしょうから、専門施設に紹介してくださいとも言っています。今日は、これを検証したいと思っています。

まず食物負荷試験は危険でしょうか?。もし負荷試験中に危険な症状が出たら、アドレナリンを注射します。医師によって注射を行うタイミングは異なるでしょうが、診ていられないほどの症状なら、迷わず使うでしょうから、それは危険な状況と言えるでしょう。

当院では、この1月にクルミで慎重に負荷試験を行いましたが、アナフィラキシーショックを経験してしまいました。それ以来、10ヶ月は一度もアドレナリン注射を行っていません。その前も14か月は注射をしていません。

つまり、およそ2年でアドレナリン注射は1回使ったことになります。多分、日本の第一人者の施設は、はるかに多いアドレナリン注射を行っていると思います。

多分、「うちは重症が多いから」と反論するでしょうが、当院も割合は少ないでしょうが、重症な患者さんも診ています。重症な患者さんは、少量から食べさせて、軽くても症状が出てしまえば、「やはり重症だった」と判断できます。そういう工夫をしているのです。

食物負荷試験が危険かどうかは、医者のやり方が一番影響するのであって、工夫すればどうにでもなると思っています。ですから、負荷試験は危険な場合もあるというのは事実でしょうが、開業医ができないほどの危険なものとは到底思えないのです。

要は、学会が勝手にそうだと決めつけているだけでしょう。もちろん、当院は、アドレナリン注射を使わないように、相当気を遣っています。そこまで気を遣って負荷試験をやっている医師がまだまだ少ないのだろうと思っています。

あと、学会は負荷試験のために専門施設に紹介するように言っています。開業医は、驚くほど、紹介したがりません。当院から数キロしか離れていない開業医であっても、当院に負荷試験で紹介があった試しがありません。

医師からすれば、除去と言っておけば、責任を果たした気になれることも、紹介を妨げる要因になっているでしょうし、開業医にとって「紹介」=「患者が減る」、「利益が減る」という図式が成り立ちますので、バカ真面目にそういうことをする小児科医って、なかなかいないと思います。

当院は、卵でも乳でも加工品を用いた負荷試験を行っています。クッキーやビスケットは小麦と抱き合わせで焼いてあるので、卵や乳単独で食べさせるよりも、症状を起こしにくいと言われています。

逆に、症状を起こしにくくしてくれるのなら、開業医が行う負荷試験に使わない手ははりませんよね?。

私は小麦との合わせ技で、相当アレルギーを起こしにくくできるという感触を思っていますが、開業医を奮い立たせるためにも、それを立証して欲しいのですが、驚くほど研究は進んでいません。第一人者は、自分達が研究で行った卵や乳単独の負荷試験のやり方をガイドラインに明記していますので、開業医にとってはやりづらいのも当然でしょう。

要は、学会側が本気で開業医に負荷試験をやらせようとはまったく考えていないので、負荷試験が広まらないのだろうと思っています。

敢えて言えば、私は大きな作戦ミスなのだろうと捉えています。

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