小児科 すこやかアレルギークリニック

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2018/12/03
以前は、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは合併しているだけと考えられてきました。

故・馬場実先生が提唱された「アレルギーマーチ」という概念があり、0歳でアトピー性皮膚炎、食物アレルギーを発症し、のちにぜんそく、アレルギー性鼻炎も合併してくると思われていました。

それがアトピー性皮膚炎の湿疹から食べ物が入り、食物アレルギーを発症することが分かってきました。「経皮感作」のことですね。

あとは、成育医療研究センターの貢献が大きいのですが、アトピー性皮膚炎の湿疹を治療した上で、早期から少量食べさせることや、既に陽性化している卵白やミルクの値が、皮膚をステロイド軟膏で治療すると数値が低下することを明らかにしてくれました。

これは実際にその通りで、当院のデータでも卵白やミルク、小麦が陽性化していても、皮膚治療により、これらの値がクラス0になったりすることはあることです。それくらい、食物アレルギーと皮膚は連動しているということなんですね。

つまり、食物アレルギーを攻略するには、アトピー性皮膚炎の治療もしっかりとできなければ意味がない訳です。

ところが、成育の先生方以外は、食物アレルギーのみに力を入れてきたため、皮膚の治療が追いついていないように思っています。これは全国的な風潮です。

いつくか問題点を挙げてみますと、私が力を注いでいるアトピー性皮膚炎の早期発見により経皮感作を防ごうという取り組みが非常に遅れています。

専門医であっても、アトピー性皮膚炎なりかけの状態を“乳児湿疹”なんて言っているようです。これではいつも言っているように、過少診断・過小治療になり、食物アレルギーが悪化してしまいます。

最近、スキンケアが注目されていますが、スキンケアとは、保湿剤を使うメンテナンスを意味しています。

保湿剤だけではアトピー性皮膚炎の攻略は難しいと考えています。やはり皮膚に炎症が起きているため、ステロイド軟膏(スキンケアでなく薬物治療)という炎症を抑える効果の強い薬を使わなければならないと考えています。

学会発表では、既にアトピー性皮膚炎を発症しているであろうケースにも、皮膚をよく洗い、保湿剤を塗布していますというものがいくつもありました。これでは、経皮感作は抑えられないはずです。損な甘いものではないと経験上も思います。

アトピー性皮膚炎の治療は、本気でやろうとすると、ステロイド軟膏を十二分に塗って、これでもかと継続的に、そして積極的に塗っていかなければ、前に進むのが困難なくらいです。

ところが、多くの小児科医、皮膚科医が、ステロイド軟膏の使い方を分かっていないため、かなり中途半端な使用量になっています。多分、ステロイド軟膏を使いたくないから、保湿剤によるスキンケアを行おうとしてるのかもしれません。

逆にステロイド軟膏を積極的に用いなければ、食物アレルギーにいい影響は与えられないように思います。

これも学会がリーダーシップを発揮していないから、こうなる訳でしょう。「エビデンス(証拠)が十分でない」なんて繰り返すだけです。学会は、研究費など高額のお金をもらっていて、今このとても重要な部分から目を背けているように感じています。

発症予防の多くの部分が曖昧になっていて、中途半端な対応をされているケースが多く、それによって食物アレルギーが連日作られている、というのが現実なんだろうと思っています。私はそれに警鐘を鳴らしたいと思います。

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