小児科 すこやかアレルギークリニック

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逃げ道がない
2019/05/16
ご存知の通り、当院は田舎の開業医です。

アレルギー専門病院とは何もかもが異なります。例えば、人数。うちは1人しか医者がいませんが、専門施設は5人とか10人超だったりします。マンパワーは相当異なることになります。

じゃあ、やっていることが相当レベルが低いかと言えば、そうとも言えないと思っています。いつも言っているように、「面倒なことはしない」、「リスクは徹底して避ける」という開業医は残念ながら多いです。

それでも、食物アレルギーの患者さんを眼の前にした時、何とかしたいと考えます。そこには、「リスクを避けたい」とか、「効率よく儲けられない」という考えは微塵もありません。

今の時代、「エビデンス、エビデンス」と言われます。「エビデンス」とは、医学的根拠のこと。要するに、論文にないことは、エビデンスはないということになってしまいます。以前は、医師の経験や勘が重視されましたが、今は根拠のないことは“まやかし”と言ったら言い過ぎでしょうが、相手にされなくなってきています。

例えば、当院が最もチカラを入れている食物アレルギーの発症予防についてですが、アトピー性皮膚炎の湿疹から経皮感作を受けて食物アレルギーを発症していることが分かってきています。

ただ、100%経皮感作で起こるのか、エビデンスがないと思います。私は生後1、2ヶ月から対応していかないと間に合わないと考えていますが、生後1、2ヶ月の時点でアトピー性皮膚炎を判断することは難しく、これも検討が重ねられておらず、エビデンスは不足しているようです。

中には、エビデンスを振りかざす医師もいるようです。生後1、2ヶ月の“湿疹”の患者さんを診たときに、「この辺はエビデンスが足りなく、アトピー性皮膚炎かどうかよく分からない。もう少し様子を見ましょう」とアレルギー専門病院で言われてしまうかもしれません。

当院は、アレルギーの患者さんが多く、生後1、2ヶ月で受診される患者さんと言えば、上の子がアトピー性皮膚炎があり、食物アレルギーでご苦労された親御さんばかりです。

負荷試験を繰り返し、ようやく食べられるようになったり、アトピーの湿疹の治療に苦労した患者さんが多いのです。言い方は適切か分かりませんが、そういう“失敗”は繰り返したくないと思い、当院をまっすぐに受診されています。

こういう環境下にいると、どうしたら良いのかと迷うことばかりです。今は早期に対応すれば、経皮感作ですら予防できる可能性があります。専門医も含めて多くのドクターが、アトピー性皮膚炎の診断を確定しようと、経過を長くみている間にアトピー性皮膚炎が悪化し、経皮感作も進んでしまうことを案じています。

もしかしたら、専門施設よりも「逃げ道がない」と思っています。目の前の赤ちゃん、親御さんに辛い思いはさせたくないし、それをとても期待されて早期に受診されているのですから。

この分野は、エビデンスの構築なんて待って要られません。目の前の患者さんに今考え得るベストのことをしてあげたいと思えば、こうならざるを得ないと思っています。

格好つける訳ではありませんが、ある意味でギリギリのところで診療しているつもりです。

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