週末の全国学会の発表のためのスライド作りに余念がありません。 先日も書きましたが、生後1、2ヶ月の湿疹の赤ちゃんの経過を追ったというネタで発表予定です。ひとりひとり真面目に診療したケースを集計したものです。 多くの小児科医、皮膚科医が、あまり深く考えずに“乳児湿疹”と診断しているようですが、実はそのかなりがアトピー性皮膚炎だと考えています。 アトピー性皮膚炎を早く発見して治療に結びつけたいと考えながら診療していると、早期に見つけることができます。その根拠になり得るものが、採血によって分かる「TARC」という項目です。 TARCは、アトピー性皮膚炎の湿疹を数値化したもので、湿疹がひどければ高値を、湿疹が軽ければ低値をとります。日本の第一人者は、TARCは乳児期には高いものなので、診断には使えないと言いますが、そうではないようです。 今回の対象は、数十人の生後1、2ヶ月の乳児なのですが、その後の食物アレルギーの感作状況を調べています。 多くが感作を受けずに済んでいたり、感作を受けても卵のみなんてお子さんも多いのですが、一人だけ卵のほかに、ピーナッツ、イクラ、タラコが陽性でした。そればかりではなく、ダニもネコのフケにも反応しています。いかにもアレルギーの体質が強いという感じです。 実は、この赤ちゃん。生後2ヶ月で湿疹で当院を受診しているのですが、そのTARCが一人だけ突出していて、何と24000を超えていました。0歳児の基準値が1367未満と言われている中です。いかに高いか、お分りいただけると思います。 TARCを調べることにより、生後2ヶ月の時点で、多種の食品に食物アレルギーを起こしたり、ダニやペットに反応することが、ある程度推測できるのかもしれません。 ただ、湿疹の治療の経過が思わしくなく、経皮感作を許してしまったという意味合いかもしれません。いずれにしても、湿疹のある乳児をみた際に、TARCを調べることで重要なヒントが得られるかもしません。 治りにく湿疹の赤ちゃんを診た場合に、もう少しアトピー性皮膚炎の「ア」の字を思い浮かべてくれる医師が増えて欲しいと願っています。 |
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