小児科 すこやかアレルギークリニック

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悪循環
2019/08/01
二重抗原暴露仮説ってご存知でしょうか?。

イギリスのラック先生が、打ち立てた理論なのですが、この先生は皮膚から食べ物が入り、食物アレルギーを引き起こすことを見出した方です。皮膚から食べ物は入らないというのが定説だったため、それだけでも素晴らしい発見だと思うのです。

それに留まらず、口から入った食べ物は受け入れようとすることも打ち出したのです。本当にすごいと思います。

確かにそうです。極端なことを言えば、重い肝臓病になってしまった患者さんに対し、牛の肝臓を生体肝移植すれば、拒否反応を起こしますが、多くの人が牛肉を食べても何も起きません。口から“タンパク質”が入っても拒否反応は起こしません。口から入るものは、特別な仕組みがあるのでしょう。

この二重抗原暴露仮説は、多くの小児科医が知っている理論です。にも関わらず、「除去しなさい」と言ってしまうのはどうしてなのか、とても不思議に思っています。頭では分かっているけれど、体がついていかない(口?)という感じでしょうか?。

これまで食物アレルギーは除去すべきものと捉えられてきました。確かに除去していて、時間をおくと食べられることもあります。しかし、必死に除去しているのに一向に食べられないという患者さんもいます。アレルギー採血の結果も、かえって跳ね上がることもあります。

一番ダメな指導は、「食べるな」と指導し続けて、お子さんも成長し、物心がつき、「自分は(その食べ物を)食べられない」という考えが定着してしまうことです。そうなると“生理的”に受け付けないため、食べさせることは不可能に近くなります。

食べられるかもしれないのに、食べないことを続けることで、精神的に食べられなくなってしまう訳です。まさに悪循環と言えます。場合によっては、除去することで治りづらくしてしまっているのでは?と思うことすらあります。

私は、できるだけ若いうちに食べさせて、慣れさせることが重要だと書いています。待っていれば治るのかもしれませんが、待って治る保証はないと思います。であれば、物心がつく前に食べ慣れさせ、食べさせる努力をする方がいいと考えています。

専門医であっても、低年齢の負荷を怖いと考えるようです。ここ数年の当院での負荷試験は明らかに0歳児が増えています。0歳児でアナフィラキシーに至ったケースは経験がありません。連日、外来で負荷試験を行っていますが、もう1年半以上もアドレナリンを要するようなケースに遭遇していません。

食物アレルギーの医療は、この方向に進むべきでしょう。敢えて言えば、除去しちゃいけないと言っても構わないと思います。

医師から除去するように言われたら、「本当なの?」と考えていただきたいくらいです。まだまだ多くの医師が、逆のことをやっているように思えてなりません。

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