小児科 すこやかアレルギークリニック

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言ったもの勝ち
2019/11/09
「言ったもの勝ち」という言葉があります。

主張した者の意見が通りやすいとか、言った者が得をするというような意味合いだと理解しています。

正しい意見が通りやすいというよりも、間違っていようが先に言った人の考えが優先されるというようなニュアンスなのかなと思っています。

先日、体に水ぶくれが広がったお子さんが受診されました。一見して水ぼうそうを思わせる発疹でした。話を聞いているうちに驚きました。

実は、当院を受診する前に皮膚に湿疹が出たもので、皮膚科にかかったそうです。親御さんは「水ぼうそうかも?」と考えていましたが、皮膚科医から自信満々に「水ぼうそうではない」と言われたのだそうです。

結局、不安を覚え、その足で当院へ受診された訳です。どう見ても、水ぼうそうの初期の湿疹だったので、「いやいや、水ぼうそうでしょうね」と診断しました。

医療ではよくある話でしょうが、Aという医者とBという医者の言うことが異なるため、どちらを信じたらよいか分からないというものです。

名探偵コナンじゃないですが、真実はただひとつですよね。何で専門家であるはずの医師の言うことが異なるのでしょう?。確かに判断が難しいこともあります。

この場で、どうしたら私の言っていることを信じてもらえるのかを考えました。

ぜんそくやアトピー性皮膚炎なら、毎日こんな感じです。つまり、他院に通院しても咳や湿疹が治らず、当院に救いを求めて受診される方は多いです。そういう時は、ぜんそくやアトピー性皮膚炎の定義を示し、私の言っていることが適切であることを納得していただいています。

患者さんがご自分の病気が何であるかを理解しないと、本気で治療に向き合えないと考えているからです。逆に、地域で唯一の小児科でアレルギー専門医なので、それが私の役目だと考えています。

そこで、今回の水痘と思しき患者さんです。その子の通う園にも「水痘の子が出た」と正しい情報を伝えないといけません。

水痘であることの明確な根拠を示さないといけないのです。実は、秘密兵器がありました。水ぼうそうの水ぶくれを潰して、中の水分を用いて検査すると、水ぼうそうウィルスがいるかどうかを調べることができるのです。

検査結果は、当然のように水ぼうそうと判定されました。これで患者さんが水ぼうそうであることが明らかとなり、隔離が必要であることを証明できました。更に、その子の通う園にも水痘が発生したことを伝えることができました。

もし、親御さんが皮膚科医の言うことを鵜呑みにしていれば、水痘が更に拡大した可能性がありました。

ただし、患者さんからすれば、医師の言うことは絶対であり、疑うことはまずしません。今回はあまりに典型的だったので、親御さんも皮膚科医の言い分に疑問を感じたから、当院に相談くださったのでしょう。

それにしても、「言ったもの勝ち」とは医療の世界でもそうだと思っています。

今回のようなことは例外的で、正しくなかろうが、医師の言うことが正しいと思われてしまいます。そして、水ぼうそうの患者さんはこちらで登園許可書を書きましたし、水ぼうそうではなかったと判断したことが間違いであったことは知る由もありません。似たようなケースでは、また「水痘ではない」と診断してしまうことでしょう。

医師の言葉は重いですが、軽い言葉も結構あるように感じますし、「言ったもの勝ち」となってしまっていることに注意を払っていただきたいと思っています。

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