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ステロイド忌避
2021/07/06
週末の学会の話ですが、大阪の皮膚科の先生のお話は圧巻でした。

重症な乳児のアトピー性皮膚炎の画像が提示されて、頭皮も顔もとても強いランクのステロイド軟膏を使い、一気に皮膚の炎症を抑え込むのだそうです。

当院でも時に重症なアトピーの乳児が受診されますが、ステロイド軟膏をがっつりと使うというのは一緒でも、そこまで強いステロイド軟膏は使ったことはありませんでした。

確かにそこまで強いステロイドを使わなくても治療はできますが、それまで適切な治療がなされてこなかったからこそ、そんなに悪化してしまったのでしょうから、遅れを挽回すべく、炎症を一気に消し去るという意味で必要な治療だと認識しました。

1990年代と言われていますが、アトピー性皮膚炎治療の暗黒の時代でした。ある報道番組でステロイド軟膏は使ってはいけないと報道され、それで一気に患者さんの不安が爆発しました。「ステロイド軟膏は使いたくない」という患者さんが急増したのです。

ステロイド軟膏を使いたくないことを「ステロイド忌避」と言います。それから20年以上の年月が経ち、ステロイド忌避の患者さんはかなり少なくなりました。

私自身も長時間かけて説得することもしばしばありましたが、だいぶそんなことをしなくてもよくなってきました。

現在、現実にある問題として挙げなければいけないことは、医者のステロイド忌避です。「そんなはずは...」と思われるでしょうが、「ステロイドをできるだけ薄く塗って、よくなったらやめて」という医者は、残念ながらステロイド忌避と言えると思います。

日本医師会が、「かかりつけ医の言うことを信じなさい」と言っていると思いますが、要は医師が自分の持っている知識の範囲で診療行為を行うと、報酬が支払われるシステムになっているので、ステロイド忌避でも問題はないのです。いや、問題はありますが、それに納得した患者さんにも責任があるということでしょうか。

私からすると、ステロイド忌避の医者を減らすよう医師会が努力して欲しいのですが、期待はできないでしょう。

ですから、「ステロイドをたっぷり塗り続けなさい」と言われたり、「使うな」という医者はかなり少ないでしょうが、「ちょっと塗って、すぐにやめなさい」などと180度異なるような判断がある訳です。

結局、ステロイド軟膏を思いきった塗り方で一気に皮膚症状をよくして、ゆっくり減量して、その間は皮膚がツルツルの状態を維持するのが正しいのですが、ステロイド忌避の医者が正しい軟膏治療の拡大を邪魔していると言えます。

新潟県ですと、適切に治療できる医師はほとんどいないように思います。敢えて言えば、多くがステロイド忌避です。いや、これは全国的な傾向です。

患者さんも「そんなにがっちり治療しなくても、私はやんわりと治療されたい」なんて思う人もいるかもしれませんが、なるべく最短距離で治療しないと、治りにくくなる可能性があります。中途半端な治療もこれまたよくはありません。

いつになったら、多くの患者さんがアトピー性皮膚炎の適切な治療が受けられるようになるでしょうか?。個人的には、不可能に近いと諦めモードです。

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