昨日の続きです。
実際に症状を診てみないことには始まらないので、私はその中学生と予定を合わせて、学校の周囲を本気で走ってもらうことにしました。私も院外に“出張”となりました。最初はさすがにアスリートだけあって軽快な走りを見せていましたが、ペースが上がった時に初めて“症状”をみることができました。診察した結果、喘鳴は聴かれず、肺機能検査も悪化しないことが分かり、やはり「運動誘発ぜんそく」ではないという確信を得ました。しかし、「じゃあ、診断は何だ。どう対応したらいいのか?。」と悩んでしまいました。
そこで考えついたのが、全国からアレルギーの専門医が集まる学会で発表をして、私のこれまでの苦悩を提示してアドバイスを頂くことでした。これまでの症状や治療経過、各種専門的な検査結果をまとめあげ、数年前の「日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会」で発表させて頂いたのです。
学会会場では4人の先生から入れ替わり立ち替わりコメントを頂き、「声帯機能不全ではないか」ということでした。どの先生もみな同じ診断名を言われるので、自分の勉強不足を恥じ、顔から火が出る思いでしたが、その一方で「これで彼を何とかできる」とも考えていました。この病気はぜんそくとは異なりますが、ぜんそくと紛らわしいのが特徴です。実はその後いろいろあって、最終的には診断は違っていて、日本でもあまりみられない珍しい病態だったことが判明しました。その分野の専門の先生に治療をお願いし、症状は徐々に軽快していきました。何とか大好きな陸上は続けています。
結局は自分のやれることに限界があったわけですが、自分のできることはやったつもりです。恥もかきましたが、患者を何とかしようと熱くなれたことを私はちょっとだけ誇りに感じています。何年も前のことですが、今となってはいい思い出です。


