当院は、診察室の脇に点滴する部屋があります。4畳ほどの広さの小上がりの横に、ベットが二つ並んでいます。小さい子なら小上がりに4人は寝そべれるので、最大で同時に6人の点滴ができることになります。
開院して5か月になりますが、この6人のスペースに2人の患者さんが並んで点滴をしたのは1回だけ。あとは週に1~2人あるかどうかです。あまりに点滴しないので、本来なら“点滴室”と呼ぶべきなのですが、食物負荷試験をするための「負荷部屋」と称しているくらいです。ちなみに負荷試験中に子供が退屈しないように、小上がりの上にはおもちゃがたくさん置いてあり、寝転ぶスペースはありません(汗)。
当院は、以前から申し上げているように、アレルギーの患者が多く、感染症はさほど多くはなかったのですが、最近ではアレルギーで通院しているお子さんの他に、アレルギーがないお子さんでも発熱したり、吐いたりした時に受診して下さるようになりました。小児科ではよくみられる胃腸炎で何度か吐いたり、下痢したりしている場合は、点滴が必要かどうか冷静に判断しないといけません。子供の場合は、点滴されて、その次からはしばらくは医院や診察室に入りたがらなかったり、泣きわめいて“診察拒否”をするということは結構あります。それでは仕事にならないので、“子供が一番嫌がる治療”は当院ではなるべくしない方針なのです。
判断はドクターにより差はあるのでしょうが、私の場合は「何度も吐いている」という訴えで受診される場合でも、最後に吐いてから時間がかなり経っており、水分も少しずつ摂れて、しかもおしっこの出ているケースには点滴はしておりません。別に吐いた子がすべて脱水になる訳ではないし、嘔吐の状況、最後に吐いた時間、水分が摂れるか、おしっこの出具合いなどをよく聞いて、点滴が必要かどうか判断しています。アレルギー以外でも丁寧な情報収集は大切だと考えています。
ぜんそく発作での点滴は、以前も書いたと思いますが、開院してから薬が飲めない小さい子に5人程度やったくらいです。ぜんそくの場合は、病気の性質を充分に理解して早め早めに動けば“点滴”が必要になる状況はかなり回避できると考えています。それだけでなく、点滴の一歩手前の治療である“吸入”をすることさえも、ほとんど必要なくなると思います。秋から冬の発作を起こしやすいシーズンでも、当院で吸入をするのは1日あたり0~2人くらいでした。
勤務医時代も、私の「アレルギー外来」で継続的に治療をしていた患者さんの中で、入院加療を要したのは年間1~2人程度だったと思います。入院してくる患者さんはだいたい“ぜんそくと診断されていない”、もしくは“(患者さんの判断で)喘息が治ったと思って治療していなかった”場合です。私の恩師の先生の病院には養護学校が併設されていましたが、以前はぜんそく児だけで100人近くが長期にわたって入院加療していたのに、私が研修させて頂いた時は十数人まで減っていました。それは小児ぜんそくの治療法が進歩したのと、たまの軽い発作の子には“その都度の治療”、月に1回以上の発作がある軽くない子は“継続的にキチンと治療する”という方針を記した「小児ぜんそく治療・管理ガイドライン」が普及してきたためです。
私が日頃から心掛けているのは、小さい子で一度でも重めの発作を起こした場合は、「こんな状態になったら、早く連れてきてね」と指導させて頂いています。こうすると、軽いうちに悪化の芽を摘むことができると思います。学童になると「肺機能検査」をやっています。“異常”なら、親御さんや本人さえもが認識していない(ぜんそくは治ったと考えている)だけで、症状がなくなっていないことが多いです。この年齢ならキチンと治療しないと、ぜんそくを大人に持ち越す可能性が高くなります。時間をかけて説明して、発作を起きないよう抑え込む治療をお薦めしています。この肺機能検査のテクニックは福岡で学んできたことです。
ただ、私が大幅に特別なことをやっている訳ではなく、小児アレルギー学会お薦めのガイドラインに沿ったオーソドックスな治療をするだけで一部の重症な患者さんを除き、ぜんそく発作を予防することは可能で、つまり“点滴”さえもしなくすることは難しいことではありません。
当院かかりつけで、よく受診されるお母さんから、「この医院は患者さんが点滴をしているのを見たことがないですよね」とたまに言われます。よく見てくださっているものだなと思います。かわいい子供たちに痛い思いはさせたくない、特にアレルギーの子なら元気に通院して欲しい、そう思って治療に取り組んでいます。


