点滴死亡事故を起こした医院では、1日約300人くらいの受診があったそうですね。それを聞いて「ええーっ!?」って思いました。
小児科と整形外科の差はあるのですが、果たしてこんなに多くの患者さんを診察できるのだろうとか、疑問に思ったのです。1日8時間労働とすると、480分の診療時間となります。一人当たりの診察時間は単純に割り算をすると1.6分となります。よく話題にされる「3分診療」の更に半分ということになります。
これはあくまで平均なので、5分くらいの診察時間の人もいれば、1分以下で済まされる患者さんもいたということでしょう。薬をもらいに来た患者さんが多いということでしょうか?。たった1分半の診療で分かりやすい医療が行われていたのだろうか、初めてかかる患者さんにも話をよく聞いていたのだろうか、と心配になってしまいました。小児科特有のことですが、診察を嫌がる子供を場合によっては二人がかりでおさえてのどを診たりしますので、とにかく診察に時間が掛かります。小児科では有り得ない数字だと思います。
当院のようにアレルギーの患者さんが多いと、更に時間が掛かります。いや、掛けなければなりません。赤ちゃんが泣くと「ゼーゼー」という肺の音はまったく聴こえません。真面目に聴くには、泣き止むまで待たなければなりません。アトピーの子は全身をくまなく診なければなりませんし、食物アレルギーだと、過去の食事内容を聞かなければならないし、赤ちゃんだと離乳食の進め方も私が説明しています。
日本の医療システムは、沢山診たもの勝ちです。経営面で“有利”という意味です。先の医院では、患者さんが沢山来るから平均1.6分しか掛けられないのか、それとも効率重視で、沢山診るための流れ作業的なスタイルを取っているからなのか、と考えてしまいます。点滴の作り置きをしているところをみると、後者ではないかと勘ぐられても仕方ないと思うのです。
当院では、他の医療機関で治療してもよくならずに初診で受診されると、30分くらいは時間をかけて、病気のこと、治療のこと、今後の見通しなどを説明しています。他院では受けられないような専門的な説明をじっくりと行っても“一人”なのです。この「30分」の間に風邪の子供を10人診た方が医院にとっては有利なのを知っていても、私は自分の実力を発揮しやすい方に力を入れています。市外から私を頼って下さっての受診も少なくないので、尚更そうしなければならないと思うのです。
「数」を優先する医院もあるかもしれませんが、困っている患者さんに時間をかけて対応する方が、医院の存在理由が明確になると言いますか、患者さんからより必要とされると思っています。本来は、患者さんに対し、自分のことを顧みずに、献身的に頑張る医師が多かったからこそ「医は仁術」という言葉ができたのだと思っています。私の持っている辞書に「最近は職業人としての意識が先立ち過ぎるため、一部に『算術』という批評もある」と書いてあるのは嘆かわしいことです。
アレルギーでお困りの患者さんたちが当院を目指して多く受診して下さっています。時代は「医者に診てもらう」から「専門医に診てもらう」とニーズが変わってきているのだと実感しています。待ち時間をなるべく少なくするという意味で“効率化”を図らなければならないと思いますが、「数」より「質」を念頭に置き、今後も診療内容にこだわって頑張っていきたいと思っています。


