急に秋めいてきた気がします。書きたいことは日々浮かんでくるのですが、ある夏の冷やっとした出来事を、まだ夏っぽいうちに書こうと思いました。
私が、福岡の研修先で修行していた時のことです。東北のある県のぜんそくのお子さんを持つ親御さんから電話がありました。「夏休みに祖母のいる福岡に行くので、子供のぜんそくの具合を診て欲しい」というものでした。
約束のその日に、祖母がお孫さんを連れて外来受診されました。お話によると、周囲に小児アレルギーの専門医がおらず、ぜんそく発作を起こしやすかったので、専門施設を一度受診されたかったそうです。
これまでの症状を伺うと、残念ながらぜんそくの重症度を的確に捉えられていませんでした。病気の重症度に合わせて治療を決めますので、重症度が正しく判断されていなければ、適切な治療を行うことができません。つまり、治療が物足りなかったのです。
運動誘発ぜんそくというのですが、運動してもゼーゼーいってしまうくらい重症でした。そういう時、専門医は呼吸機能検査を行います。胸にいっぱいの空気を吸って、それを検査器械に接続された筒の中に一気に吹き込むという簡単な手技で、気管支に起きている変化を調べられるのです。呼吸機能検査で太い、中くらい、細い気管支を点数づけができますが、重症なお子さんでは、特に細い気管支の点数が落ちていることが多いのです。
この患者さんにとって初めての検査だったので、やり方を説明して、やって頂きました。次の瞬間、目を疑いました。たったさっきまで肺の音は何ともなかったのですが、ゼーゼーいって呼吸困難を訴えているのです。そう、いきなりぜんそく発作が出てしまったのです。
専門医なら承知していることですが、とても重症な喘息患者さんは、信じられないくらい気管支が敏感です。胸の空気を一気に吐き出すことで、気管支が刺激されて、ぜんそく発作が誘発されてしまったのです。私はその時が初めての経験だったの、ホントにビックリしました。幸い、吸入して改善しましたので、事なきを得ました(大汗)。
別の患者さんですが、食事中にむせてそのまま重い発作につながった患者さんも経験しています。あとは家族の団らんの中で、大笑いしてゼーゼーが出る子もいます。こういう症状は軽いぜんそくではみられないことが多いので、重症度をみる上で大切なポイントになります。
以前も書きましたが、小児ぜんそくに関するガイドラインに基づいた治療をすれば、たいていの患者さんは症状を落ち着かせることができます。ちょっとした刺激で発作が誘発されるのは、治療をしていないか、発作時にのみ吸入や点滴の治療をしている、重症度に比し軽い治療しかされていないケースがほとんどだと思います。この患者さんも、主治医の方針で治療はされていましたが、それ以上に重症だったのです。
これだけ重症になると、非専門の先生には難しいと思います。アレルギー専門医が治療すべきです。しかし、新潟県と同じく、東北のその県も専門医は極めて少ないため、そうもいかないようです。そういう時は遠くても専門医のもとに通うか、専門でない先生がガイドラインをしっかりと把握して治療するかということになってしまうと思います。いずれにしても、重症度をキチンと判定し、発作を押さえるようにしなければなりません。
今回の話題のことも私の経験として、きっちり活かされています。たいていの重症のお子さんでも対応できるようになったと思います。
夏になると、かなり冷やっとしたこの時のことを思い出します。


