道に迷っていそうな困った顔をした人を見かけたら、道を教えてあげたくなりますよね?。
人から道を聞かれた場合、短時間で的確に教えるのと、時間をかけて相手の質問に答えながら繰り返し教えるのと、どちらが分かりやすいと思われますか?。
ささっと教えられて充分な人と、一応は分かったんだけれど、心配な人っていると思います。時間をかけてもらった方が、また迷ってしまうこともなくなると思います。医療もこれと同じだと思うのです。
つまり、患者さんは病気に関して道に迷っているのです。病気については右も左も分かりません。“風邪”ならじきに治ってしまうので、道案内に例えれば、「そこの交差点を左に曲がってすぐですよ」という感じで、短時間で説明が済みます。
しかし、アレルギーのような改善に時間のかかる慢性の病気の場合は、ゴールまで遠いので、時間をかけて丁寧に道順を教えてあげないと、患者さんはよく分からずに、困り果ててしまいます。医師は、“風邪”の時のように短時間で的確なことを言ったつもりでも、人によっては充分に伝わないこともあると思うのです。
当院に来られる患者さんは「前かかっていたところは、忙しそうで、聞きたくても聞けなかった」とおっしゃる患者さんが多いです。「うちは忙しそうじゃないの??」と突っ込みたくなりますが、各医師が何に重きを置くかによると思います。
待ち時間が長いのは誰でも嫌ですし、待ち時間が長ければ、院内感染の可能性が増すのも現実でしょう。外来が混めば、一人当たりの診察時間が減るのは分かります。しかし、少しは予備知識のある患者さんもいれば、全く知らないという患者さんもいることでしょう。そんな患者さんに、同じ口調でささっと教えようとするのは無理があると思います。
丁寧に繰り返し教えようとすれば、当然時間はかかります。しかし、そうすることによってほとんどの人が治療の道筋を理解して下さると思います。医師が患者さんの待ち時間を気にしてていたら、道に迷う人は一向に減らないはずです。アレルギーで道に迷っている人に時間をかけて経路を教えるようにするのが、当院のポリシーであり、存在理由だと思っています。
先日来られた患者さんは、食物アレルギーがありましたが、普段かかっている小児科医になかなか話を聞くことができなかったそうです。1歳頃に食べられなかった卵の加工品が、今では食べられるようになり、生卵を食べた時に口の周りにじんましんが出るとおっしゃっていました。ご自分で試行錯誤して負荷試験までやられていたのです。他にも魚卵やナッツ類でも症状が出るのですが、主治医に相談できていなかったので、アレルギー検査さえやっていない状況でした。
下にもお子さんがおり、食物アレルギーを心配されていましたが、乳児検診時に主治医に離乳食の進め方を相談しようとしても、あっという間に終わってしまい、聞きそびれてしまったとおっしゃっていました。お母さんは気を遣う、遠慮深いタイプの方なのだと思います。でも私にはいろいろと話をして下さり、詳しく説明もできたし、相談に乗ることができたと思います。
人間には、いろんな性格の人がいます。納得いくまで積極的に聞く人と、そうでない人もいます。誰にでも分かるような医療をするには、患者さんの顔を見て、理解の具合を感じながら時間をかけて説明をすることだと思っています。


