小児科 すこやかアレルギークリニック

クリニックからのお知らせ

病院からのお知らせ

防衛医療
2008年08月22日 更新

一昨日、胎盤の癒着が原因で、お母さんが亡くなったという不幸な医療事故の判決が出ました。

私は産婦人科医でないので、この件の詳細についてはよく分からないのですが、執刀した医師が逮捕されるという事態となり、医療者の間では大きな衝撃でした。それ以来、医師が不測の事態で逮捕されるのなら、もうお産は引き受けないとお産を止める産婦人科が増えたと聞いています。

その影響で10数件の病院に受け入れを断られ、患者が死亡するという悼ましいニュースを時々耳にするようになりました。これを「防衛医療」というようです。また患者にとってプラスになる医療行為でも、リスクを避けることを優先する医療を、同様な意味ですが「萎縮医療」、「保身医療」とも言うそうです(Wikipediaより)。近頃は、負のスパイラルといいますか、医療が保守化しているような印象も受けます。

話は変わりますが、私は食物アレルギーにこだわっています。それは、いつも言っている通り、食物アレルギーの分野が一番混乱しているからです。

卵アレルギーがあるから、鶏肉を食べてはいけないと指導されている先生もいますが、決してそんなことはありません。卵の加工品を食べて、じんましんが出たお子さんに一律にMRワクチンを受けないようにという指導も正しくありません。血液検査だけで、卵なら卵を含むすべてのものを禁止するのも、患者さんを窮地に追い込むような指導だと思います。アレルギー検査が「0」にならないとその食品を食べてはいけないという指導も間違いです。ほかにも沢山ありますが、医師の言うことにバラツキが生じてしまっています。

混乱の最大の原因は「食物負荷試験」が普及していないことだと思います。負荷試験を実施している小児科医なら、卵アレルギーがあっても鶏肉が食べられること、年齢にもよりますが、検査が「2」や「3」であってもその食品が食べられることは、共通の認識なのです。

食物アレルギーは、1歳では7.6%、3~5歳の園児では5%くらいの頻度があると言われています。これくらいの割合なので、相当数の患者さんが存在する計算になります。それでもやる医師が少ないのは、何らかの理由があるからでしょう。アレルギー専門医の資格を持つ先生でも「アナフィラキシーショックの可能性があり、行うことはできない」という医師もいるようです。

専門医の間では“負荷試験でシロクロをつける”という意見は一致していますが、手順がバラバラなため、日本の第一人者の間で標準化された検査方法を構築しようとしている途上です。それが完成しても、現状を鑑みても負荷試験が大幅に普及するのは難しいと思っています。一部の専門医が、リスクを背負いながら、患者さんのために懸命に負荷試験をやっているのが現状と言えます。

小児科医は、弱い子供を相手にしていますので、通常はリスクの高いことは行いません。私も自分の身も守らなければなりませんが、それだけではいい医療はできないと考えています。こどものすこやかな発育のために、時には“攻め”の医療も必要だと思っています。