昨年の9月7日に上越の地に「小児科 すこやかアレルギークリニック」を開設させて頂きました。
開業を考える医師には、いろいろな開院目的があると思います。地域医療に貢献したいというのが多いはずだと思いますが、当直が多いとか、出世できないとか、給料を上げたいとか、そんな理由もあるようです。私の場合は、アレルギーで困っているこども達を助けたい一心でした。
医学の進歩により、ほとんどのアレルギーの患者さんは、外来で対応ができるようになったと言ってもいいいでしょう。以前は、重症ぜんそくの子は入退院を繰り返していましたが、現在はほとんどの患者さんが入院せずに治療ができるようになりました。アトピー性皮膚炎も外来でじっくり軟膏の塗り方を説明すると、ほとんどの患者さんを改善する方向へ持っていけると思いますし、食物アレルギーも食物負荷試験を外来で行えば、充分管理は可能です。
柏崎の病院に勤務している時は、週2コマのアレルギー専門外来は満杯状態で、午前外来にアレルギーの患者さんが集まる状況でした。その当時から、長岡や上越から受診される患者さんも少なくなく、私が開院すれば、毎日“アレルギー外来”ができると考え、開業の準備を進めていたのです。
あれよあれよという間に、開院の日を迎えたことを昨日のことのように覚えています。小児科と言えば、風邪や水ぼうそうなどの感染症を中心に診察して、地域のお子さんの健康を守るというのが一般的です。これまで県内にアレルギーに特化した小児科医院は、ほとんどありませんでした。開院するにあたり、患者さんに受け入れられるのか、正直言って不安はありました。患者さん達もかなり通院して下さるようになりましたが、この1年を振り返り、自己採点をするとすると65点くらいでしょうか。
先日、市内から園児になってもアレルギー米しか食べたことのないお子さんが受診されました。この子はアレルギー検査が高くても、かなりの確率で普通米を食べることができます。検査結果のみで判断されていたケースです。
また、ぜんそく発作を繰り返している高校生も受診されました。治療を見直し、数日前に再診されましたが、2週間で症状の改善をみて喜んでいました。吸入補助具を使っておらず、吸入量も重症度に合っていませんでした。まだまだこういう患者さんは周りに多いのだと思います。1年経ってもこういう患者さんが受診されると、胸が痛みますし、自分の努力不足をまざまざと見せつけられている気がします。
アレルギーは、本当に良心的に診療しようと思えば、診療や説明にとても時間がかかります。以前も似たようなことを書きましたが、一人当たり30分対応して、8時間労働として1日に16人しか診られなければ、その患者さん達には有り難がられると思いますが、医院は赤字で潰れてしまいます。経営のためには一人でも多くの患者さんを診るべきでしょうが、アレルギー専門と看板を掲げておきながら、風邪と同じように2~3分の診療で終わらせてしまうのは、私のプライドが許しません。
この1年、そのポリシーは貫き通せたと思っています。アレルギーで困っている初診の患者さんのほとんどに30分は説明しましたし、最長で2時間くらいお話ししました。前医の指導と方針が異なったりすると、新しい治療を受け入れて頂くのに非常に時間がかかってしまうことがあるのです。よく分かり、症状が改善することにこだわる医療を続けてきたことは、良かったと思っています。
また、こどもに痛い思いはさせたくないと、点滴や採血はなるべくやらないようにしてきました。処置が多ければやはり経営に有利となりますが、これもこだわりを続けてこられたと思います。当院は最大で5人同時に点滴できるスペースがありますが、2人並んで点滴というのがこの1年で2~3回あったくらいで済みました。
来月4日に行う「すこやか健康フェア」もそうですが、開業医でも患者さんに情報発信を行うことができます。小規模ですが、月1回の無料勉強会も12回行いました。同じ話しはしたくないので、実は準備に時間がかかるのです。くじけそうになったこともありましたが、何とかやり通しました。
専門性を売りにすると、遠くからも患者さんが受診して下さいます。この1年で新発田、新潟、三条、長岡、小千谷、魚沼、南魚沼、柏崎、妙高、糸魚川の各市から遠路はるばる受診して下さいました。自分の実力を評価して下さっているバロメーターと思われ、2年目以降も更に多くの困っている患者さんの手助けができればいいと思っています。
食物負荷試験など県内でほとんど行われておらず、オーバーに除去を主治医から指示されているケースはもっともっと多いはずです。新潟市内の大病院で最近やられ始めたようですが、当院は開業医の利点を生かして月曜から金曜に負荷試験を行っています。県内には当院の存在はまだしも、「食物負荷試験」という検査があることすら認識されていない患者さんが多いと思います。食物アレルギーだけでも、もっと適切な医療を受けられる余地があるのです。
ぜんそくもアトピーも適切に診断されていないこともあり、アレルギー専門医が診察して病状に合った治療をするだけで、速やかに症状が安定することも少なくありません。「うちの子の症状はもっと良くならないのか」とどん欲に良い医療を追求して頂きたいと思っています。
私のやりたいこと、というか“やらなければならないこと”は沢山あります。ですから、この1年を振り返ってみて、アレルギーにこだわり、ポリシーを貫いても良い点はつけられないのです。来年は70点くらいを目標に、地道に真面目に診療をやっていこうと思っています。


