秋が深まり、発作を起こすぜんそくのこどもがどこの小児科でも多いと思います。
9月くらいから発作を起こしやすくなってきますが、当院は重めの発作を起こした小学生を1人病院へ紹介し入院治療となりましたが、それ以外は入院はなく、外来点滴も一人もしていません。開院以来、ほとんど点滴なしをキープしています。
当院は、ぜんそく治療はこだわっています。それなりに専門的な知識も技術も持っているつもりです。早めに手を打ち、その結果が点滴ゼロです。成人の場合は点滴も止むなしの部分もありますが、小児科では点滴はしないに越したことがありません。その小児科医の技術の差で、処置に差が付きかねないことは、患者さん方はご理解頂きたいと思っています。嫌な言い方と思われるかもしれませんが、そうでなければ「アレルギー専門医」の資格は意味がなくなってしまいます。
2~3年前のことですが、ある地域の中核病院から重症ぜんそくのお子さんの紹介がありました。最初は軽い発作で、ある開業医で診てもらっていたそうですが、治療を止めると発作を繰り返し、発作の頻度は徐々に増していき、1か月に1回、1週間に1回、しまいには毎日ゼーゼー言うに至ったそうです。
かわいそうなことに、3歳の子が常に苦しいので遊ぶこともままならず、息継ぎをしないとしゃべれなかったそうです。本当に重い発作の場合は、しゃべれなくなるのです。つまり、このお子さんはそれほど呼吸困難が持続していたいうことです。
ここまで重ければ病院に紹介しなければならないのに、その医院では毎日朝晩に点滴に来るように指示し、10日以上ステロイドの点滴を繰り返したそうです。点滴をしながら酸素を吸わせていたようですが、ぜんそくの患者さんが最も苦しくなるのは「夜間」なのです。家に酸素はないので、家で苦しいのを我慢させていたことになります。かわいそうなことをしたと思います。
ハッキリ言いましょう。小児ぜんそくの治療にオピニオンリーダー的な役割を果たしている小児アレルギー学会は、発作時にこのような治療を推薦していません。入院の適応は「2時間程度の点滴治療をしても改善しない場合」や「前日から発作があり、夜も眠れなかった場合」と明記されています。つまり2日以上の点滴通院は、勧めていないということになります。低酸素で苦しいこどもをいたずらに外来治療で引っ張ってはいけないということを意味しています。アレルギーの専門医ほど、この適応を守っていると思います。
結局、点滴を繰り返す“治療”をして良くならなかったので、前主治医は患者さんに「すみません」と謝ったそうです。確かに重症なお子さんですが、もう少し早く病院に紹介していたら、ここまで悪化しなかった可能性は高いと考えています。患者さんは治療費を返してもらい気分だったそうですが、当然返却の話も出ませんでした。
紹介された中核病院で2週間くらい入院治療しても発作は完全には止められなかったため、前勤務先にいた私のもとに紹介になりました。あまりにも重症化していたため、入院期間は1ヶ月近くもかかりましたが、完璧に発作は止め、安定した状態で退院して頂きました。専門医が“入院”した上で、治療してもこれくらいかかってしまったのです。
この患者さんは、私が医院を開いた後も通院して下さっています。発作らしい発作はその後は一度も起こしていません。ちなみに、インフルエンザワクチンで前の主治医のもとを訪ねた時に「どうやって治療したの?」と興味津々だったそうです。医者の間では、紹介して下さった先生に返事を書く習わしになっており、中核病院の先生しか私の治療経過を知らないのです。
上越市内外からぜんそく症状の安定しないお子さんが、当院を受診されています。これまでの治療歴を聞くと入院の適応が守られていないケースも目につきます。点滴に2~3日通ったとおっしゃる方もいますが、中には未だに7日間も点滴に通いとおしたというお子さんもいます。処置が増えれば医院は潤いますが、同じ過ちは繰り返してはならないと思います。
私の経験では、もし何日も点滴に通わなければならないくらいの重症なら、日頃とても発作を起こしやすいお子さんです。日常的に咳が出やすいはずです。つまり治療不足の可能性が高いと思われます。普段から発作を起こしやすく、発作を繰り返している上に、その都度の点滴治療はかわいそうだし、対応としては後手後手と言わざるを得ません。
重症な患者さんはごく一部なのですが、重い患者さんは専門医でなければ診るのは難しいのも現実だと思います。私自身、小児アレルギー学会が推奨する治療法で、数々のぜんそくのお子さんの治療をしてきましたが、99%以上は良好に治療できています。診る人が変われば、治療結果も大幅に変わり得ます。“患者さんのため”に専門医に紹介して頂きたいし、キチンと治療すれば点滴や発作の回数自体も減らすことができると考えています。
私の地元から個々の患者さんにとって適切で、正しいぜんそくの治療を広めていきたいと思っています。ステロイドの点滴治療は万能ではないことを認識して頂きたいと思います。もし発作を繰り返したり、点滴に通院している患者さんがいらっしゃれば、もう少し良くする方法があることを知って頂きたいのです。痛い思いで通院するのは仕方ないと諦めて欲しくないのです。お困りの患者さんはご相談下さい。


