小児科 すこやかアレルギークリニック

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2008年11月28日 更新

先日、市外から食物アレルギーの患者さんが受診されました。

これまでは、地元の病院にかかっていたそうです。その病院の常勤の先生ではない若い先生に診てもらっていたようです。現実的な問題として、食物アレルギーの専門的な知識を持っている医師は、実はかなり少ないのです。若い先生だけでなく、ベテランであったり、人気の小児科医であってもでその可能性は高いでしょう。

お母さんの話によると、何人かの先生に話を聞いても、「食べさせてはいけない」の一点張り。アレルギー検査では、卵やミルク、大豆、小麦など何項目も反応が出ていて、すべて除去するように指導されていたそうです。

ちょっとおかしいと思ったのは、「食べるかどうかは、お母さんが判断して」と言われていたそうです。お母さんは“素人”だから、“プロ”である小児科医に何をどう食べさせるかを相談しているのに、その言い方はないですよね?。以前、学会で似たような話題になった時に、食物アレルギーの専門の先生が「それは職務怠慢だ」と発言されていました。確かに、そう言われても仕方ないかもしれません。

一般の小児科医は、心臓の悪そうな赤ちゃんを診た時に「心臓の専門の先生に紹介状を書きましょう」と言うし、赤ちゃんが具合悪く生まれそうな時な新生児の専門の先生のところに母体搬送します。なぜアレルギーだけ、そうしないのか本当に不思議です。

最近になって、地元の同業者の先生から負荷試験の依頼が来るようになりましたが、まだごく一部だけなのが残念なところです。この患者さんがどうして当院に来られたかと言うと、3歳健診の時に担当の保健婦の方が当院の受診を勧めて下さったのです。

私が「食物負荷試験」をやっていなければ、前医の先生と同じような説明をしていたのかもしれません。しかし、私は県内ではどの小児科医の先生よりも積極的に負荷試験をやっていると思います。「困っている患者さんに正しい医療を提供したい」という信念で診療しているつもりです。親御さんには、全国のアレルギー専門医ならば、どう食物アレルギーを診断し、どう対処しているかを時間をかけて説明しています。話をしている最中に、「もっと早く受診していればよかった」と涙を流すお母さんも少なくありません。

このお母さんは、中越地方に住むお姉さんのお子さんがやはり食物アレルギーで、当時柏崎の病院にいた私のもとに通っていたそうなのです。負荷試験の話も少し聞いていたそうで、お姉さんのアドバイスを聞いていれば良かったことや、これまで必要以上に除去を続けていたことに後悔の念を抱かれてようです。

また、お母さんも一生懸命頑張ってこられたので、少しでもアレルギー検査の数字が下がっていることを確認したくて前医に検査をお願いしても、「食べて症状が出るようなら、検査をしても仕方がない」と検査してもらえなかったそうです。お母さんの気持ちはよく分かります。お母さんは数字が下がることで、そこにご自分の努力を見出したかったのかもしれません。

男は女性の涙を見ると、オロオロしてしまいがちです。私だって同じです。前医の先生が良い悪いではなく、「食物負荷試験」をやっていて食物アレルギーの専門的知識を持った医師が少な過ぎるのです。これまでのことを悔やんでも仕方ありません。これから正しい、的確なことをやっていけばいいのです。幸い、これまで数字が高かったアレルゲンもかなり食べられるようになってきています。卵とミルクの負荷試験をやれば、かなり解決しそうなことを説明し、近々負荷試験を行うことにしました。

お母さんの涙が乾くくらい長く説明したのですが、診察室を出て行かれる時にホッとした表情で「本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。」とおっしゃる姿に私も救われた気がしました。私は医師として特別なことをやっているつもりはないのですが、食物アレルギーの医療は“人助け”なのかもしれない、そう思ってしまいました。