先日、テレビを観ていたら、今シーズンでソフトバンクの監督を勇退した王監督が出ていました。
しばらく観ていると、さすがは「世界の王」と称されただけのことはあり、インタビューでいいことを言っていました。「プロというのは“過程”よりも“結果”が求められる。100回やって100回、1000回やって1000回できるのがプロなんだ。」と答えていました。
確かに、プロは打者なら打率や打点、ホームラン数など数字が物を言います。どんなに頑張っても、いい成績を収められなければ一流とは言えないと思います。
考えてみたら、医療も病気のプロなんだから“結果”が求められると思います。患者さんは病気の苦痛から早く解放されたくて、医療機関の門を叩くのです。どんなに医師が時間をかけて勉強して治療を施しても、治らなければ患者さんにとってメリットはないのではないでしょうか?。
現実問題として、医者の世界も“結果”が求められるようになってきています。手術は成功と失敗がハッキリしているので、ガンなどの治療成績を示す手段として「手術成功率」を公表する方向になっていると思います。もし自分が患者なら成功率が50%の施設よりは75%の病院を選びます。ただし、同じ75%でも1年間で4人手術して3人成功したのと、400人手術して300人成功したのでは、大きな差があります。当然、症例数が多い方が様々なケースを経験していて、ちょっと難しくても確実に対処してくれるであろうという期待が持てると思います。
一方、小児科も含めた内科系になると、手術はしないので技術を測る指標がないのです。患者さんも腕のいい医師に診てもらいたいと思うのでしょうが、なかなか医師の腕を見極めることは難しいでしょう。
この前、市の健診に行ってきました。1歳半健診でしたが、診察したあとに「心配なことはないですか?」とひとりひとりに聞いていますが、あるお母さんは「ぜんそくがあって…」とこれまでの状況を話して下さいました。
お母さんの話では、ぜんそくと診断されていて、よく発作を起こし、ある医療機関でその度に吸入や点滴に通うよう指示されているそうです。1か月の半分はその医院に通うこともあるそうです。
ちまたでは小児ぜんそくは治療しやすくなっています。それは私の恩師の先生が中心になって「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」を作成し、アレルギー専門医でない先生方にもプロ並みの治療法を標準化したため、かなりいい治療を選択する先生が増えてきたのです。私も日本の第一人者の先生の元で修行を積んできましたので、ガイドライン通りの治療を心掛けていますし、上越にもそういった治療が更に普及することを望んでいます。
先の患者さんは、なぜ良くならないのでしょうか?。結論から言うと、ガイドライン通りの治療をされていないからです。
ガイドラインでは発作を繰り返す患者さんには、予防的治療を勧めています。話によると痰きりと気管支拡張剤のテープが出されていたそうです。これは予防薬とは言えません。もっと有効な治療薬があるのです。
「吸入に通う」ように指示されていたということですが、軽い発作であれば、吸入であっという間に改善します。しかし発作を起こしやすい患者さんに対して、ましてや前日に吸入をして改善のない患者さんに対し、吸入という治療はあまり効果はないと思います。何故か?。吸入は数時間しか効果が持続しないので、毎日通っても治療効果は期待できないと思います。点滴もされていたようですが、ガイドラインでは2時間程度の点滴治療をして改善が思わしくなければ、入院治療を推奨しています。何日も通わせての点滴治療はやるべきではないと考えています。
なぜならば、ぜんそくのある程度、重い患者さんは外来で通院治療すればする程、改善が長引くことが多いのです。つまり発作を繰り返すことで、発作をより起こしやすくしているので、悪循環に陥ります。少し前ですが、このような治療を受けて重症化してしまい、ゼーゼーを安定させるために1か月入院治療をしたケースを紹介したと思います。
月の半分という高頻度で医院に通うというのは、行っている治療が適切でないのではないかと考え、見直す必要があるでしょう。ガイドライン通りの治療を行えば、そういうことは起き得ないと断言できます。アレルギーがご専門ではない先生なので仕方ないといえば仕方ないのですが、対処が難しければ患者さんのために紹介して頂ければ、キチンと治療させて頂きたいと思っています。
患者さんも、信頼して通っていたのに症状が改善しなければ“セカンドオピニオン”という手があります。別の専門医に、これまでの治療が正しいのかどうか判断してもらう方法です。患者さんの方が“結果”を求める医療にこだわるのもひとつの手だと思います。
当院には、アレルギーで困っている患者さんが多く受診されますが、まだまだこういう患者さんが少なくないのですね。困っている患者さんのために敢えて書かせて頂きますが、こどものぜんそく治療に“吸入に通う”、“点滴に通う”という方法がスタンダードではないことを知って頂きたいと思います。
ガイドラインに沿った治療を専門施設で学んできた者として、正しい適切な治療を勧めるガイドラインを広めたい。そう、強く思わずにはいられなかった今回のエピソードでした。


