小児科医は、こどもが嫌いではやっていられません。当たり前のことだろうと思います。
私は、診察中にこどもに話しかけたり、こどもと遊んだりしています。小児科の医院は、こどもが“主役”なので、こどもの嫌がることは極力しないのが当院のポリシーです。点滴も採血も「調べない方がデメリットが大きい」と判断された時にのみ、行わせて頂いています。それは開院以来ずっと守り通しています。
先日、普段からかわいがっている常連のお子さんを診察室に呼び入れようとしました。いつもなら診察室の中にあるおもちゃで遊ぼうと勢いよく入ってくるのですが、「注射しない?、注射しない?」とおどおどしながら、不安そうに私に尋ねて、なかなか入ってこようとしません。明らかに、いつもと違うのです。最初は、どういう事情なのか分かりませんでした。
当院は患者さんにより新しく正しい医療を提供したいと思い、時々休診にして学会活動をしています。この13日も横浜で小児アレルギー学会があったので、かかりつけの患者さんには申し訳ないのですが、その日は休診にさせて頂いていました。
先の患者さんが、あいにくその日に体中に水ぶくれが増えてきたそうです。そうです、水ぼうそうにかかってしまったのです。当院は休診でしたので、別の医療機関を受診されたそうです。小児科医は水ぼうそうと診断したら、軽く済ませる飲み薬と塗り薬を処方するのが通常のパターンですが、採血をされ点滴まで受けたというのです。「えっ」と思いましたが、話の続きを聞いてみると、水ぼうそうの他に「マイコプラズマ」と診断され、点滴の他に採血を2回も受けたそうです。
だから、その子は当院でもまた採血や点滴をされると怖がっていたのです。そこでようやく理解しました。ちなみにこのお子さんはぜんそくがあり、当院で治療しています。お母さんに確認すると「咳はちょっとしていた」そうです。熱もなかったと聞いています。また点滴をしている時に、同じ治療を受けているこどもの数に驚いたとおっしゃっていました。
私はアレルギーと小児呼吸器を専門にしています。これはあくまで私の普段の診療においての話ですが、ぜんそく発作でも点滴はしないし、マイコプラズマのお子さんは内服の抗生剤が極めてよく効くと思うので、点滴をすることはまずありません。
こどもになるべく痛い思いはさせないように、感覚を研ぎ澄まし、知識を駆使しています。採血や点滴を避ける努力をするという方針は、こどものことを思ってそうしているつもりです。
当院でも、“1か月に数回”は点滴治療をすることがあります。本当に数えるほどです。大抵は胃腸炎で何度も嘔吐を繰り返し、尿量が少なくなっている時やCRPという炎症反応が極めて高く、入院の瀬戸際の時くらいです。
そして点滴をしてしまった時は、何とか点滴を避けることができなかったのかを考えます。もし反省すべき点があれば、次の機会に点滴せずに済む対策をとりたいと思うからです。私は、点滴をしないようにするのも一種の「企業努力」だと思っています。
こどもの病気にもいろんな治療方針があっても構わないと思います。ただ、こども達に痛い思いはさせない、泣かせないためにも、当院はこの方針を貫き通したいと思っています。私の考えに共感して下さる親御さんも多いものと思っています。


