以前も触れましたが、乳児の咳は診断も治療も難しいものです。
咳が出ると“風邪”と診断されているケースも多いのですが、実はそうでないことも少なくないのです。
当院はアレルギーだけでなく、咳などの呼吸器の病気も力を入れているので、治療しても良くならないという患者さんが、口コミで当院を目指して受診して下さっているようです。
先日、ある赤ちゃんが咳が止まらないと初診され、丁寧に問診と診察を行い、「この薬で効くと思います」と説明して後日再診して頂きました。予想通り改善しており、ホッとしたところで、お母さんにこう切り出されました。「先生、この薬も出してもらえますか?」
見ると、ローションタイプの塗り薬です。「スピラゾン ローション」と書かれています。聞き慣れない名前ですが、薬品名の下に成分が書いてあり、“ステロイド”であることが理解できました。
お母さんに伺うと、前に行っていた医院で赤ちゃんの顔の湿疹にその薬が出されたそうです。特に診断名は告げられずに、その薬を使うように指示されていたそうです。「アトピー性皮膚炎」と診断されているのであれば、適切な使用法です。しかし、私が診てもアトピーという診断は当てはまりませんでした。
ステロイドは、アトピー以外にも効く場合がありますので、ステロイドであることを分かって注意して使う分には構いませんので、念のため「ステロイドだけど、知ってますよね?」と聞いてみると「えっ…」という反応でした。
当院の場合、なぜその薬を使うのかを説明し、処方しています。ましてや“ステロイド”ともなると、ステロイド忌避といって「絶対に使って欲しくない」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。説明せずに処方すると、信頼関係を崩すことにもなり兼ねません。
当院の場合、理にかなった対応をするようにしています。ステロイドを処方する時は、診断名を告げて、どのように使うのか、どうなれば止めるのかを話しています。
お母さんの場合は、使うと効果があると言うことで、言葉が悪いかもしれませんが、気楽というか安易に使っているようでした。
以前、ステロイドの副作用があまり知られていない頃、女性でステロイドを顔に連用する方がいたそうです。一部の間で、お化粧の乗りが良くなると評判の薬だったからです。実は“皮膚萎縮”という副作用でそうなっており、知らずに使っていたのです。
申し訳ないですが、お母さんの申し出はお断りしました。その時の診察の上で別の薬を処方しました。この湿疹も一緒に経過を診させて頂くことにしました。
やはり政治家だけでなく、医師にも「説明責任」は重要だと思っています。


