先日、夜間休日診療所に執務してきました。
ちょっと時間があったので、診察室にあった内科の治療法を記載した分厚い本を手に取りました。ペラペラめくっていてちょっと驚いたのが、その本の後半が各病気に関する治療の「ガイドライン」がいくつも収録してあったからです。
私の専門のアレルギーは、医師によって診断や治療方針にバラツキがあるのも事実です。ですから、ガイドラインはアレルギーにこそ必要と思っていました。実際に、ぜんそく、アトピー、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎にはガイドラインがあります。
しかし、胃ガンや高血圧、急性心不全、糖尿病などにもガイドラインは存在するんですね。小児科にはほとんど無縁の病気なので、全く知りませんでした(汗)。
医師は、患者さんの命や健康を守るのが仕事です。不幸にして患者さんが死に至ることも有り得ます。もし、そんなことが起こってしまったら、ご家族は「果たして、これまで適切な医療を受けていたのだろうか?」と疑問が生じることもあるでしょう。
本来、医療は患者さんに最善とされる医療を施すべきでしょう。そうしていれば、副次的なものですが、訴訟などになることもないだろうと思います。
先日、新潟に恩師が来られ、昨年12月に改訂された小児ぜんそくのガイドラインについて解説する講演がありました。その中でこんな話がありました。「もし訴訟になった場合、ガイドラインに沿った治療をしていなければ、医師にとって不利になるだろう」というものでした。
別の機会に、他のアレルギーの第一人者の先生も「ガイドライン通りの治療をしなかった場合、その理由をキチンと述べられないといけない」と述べていました。そうです、“これまでずっとこの治療をやってきたから”という理由は通用しないことになってきています。
ぜんそくは、後手後手になると死に至る可能性のある怖い病気です。いつも言っているつもりですが、大発作の場合は、入院治療を推奨しています。発作を起こして何日も点滴を繰り返す治療は、ガイドラインでは勧めていません。
以前も書きましたが、大発作で受診された患者さんを診察して、「酸素の取り込みがかなり下がっているから入院治療が必要です」と説明したら、お母さんから「これよりひどい状態でも、前に行っていた医院では点滴通院で治療してもらっていました!!」とやや私の判断に不信感を持った言い方をされました。
私は、研修先で極めて重症ぜんそくの患者さんをたくさん診てきました。なるべくなら入院したくないという親御さんの気持ちも考慮に入れた上で、入院の判断をしています。それを明らかに超えた状態だったので、ご両親にガイドラインをお見せして「お子さんの今の状態は、“大発作”であり、入院治療が原則です。無理に引っ張って苦しい思いをさせるのは得策でなく、キチンと治療してそれから入院しない治療法をしていきましょう」と説明し、納得して頂きました。
ちなみに病院に入院したら“イソプロテレノール持続吸入療法”という最重症な治療を行ってもらい、数日かけてじっくり治療して頂きました。結果的にも入院が適切な判断だったことが分かります。その後、当院に1年以上通って頂いていますが、ガイドラインに沿った予防的治療を行っているため、入院は一度もありません。発作もほんの軽いものが2回くらいでしょうか。もちろん点滴も吸入さえもしていません。
“入院の適応”にも触れておきましょう。1)大発作のとき、2)2時間程度の外来治療で改善しないとき、3)前日から睡眠障害を認めるとき、4)大発作の既往があるときなどですが、先程の患者さんは充分にこれを満たしています。
当院にかかりつけの患者さんで、「ぜんそく発作で1週間点滴に通った」とおっしゃる患者さんが何人かいらっしゃいます。その状況を診ていないので何とも言えませんが、「2時間程度の外来治療で改善しない場合」とハッキリ書いてあるので、入院の適応ではなかったかと心配になります。
小児ぜんそくのガイドライン作成の中心となった先生の下で働かせて頂いた者として、当地でもガイドラインに沿った治療を普及させる義務が私にはあると思っています。普段診療していて、親御さんにガイドラインを示した上でお子さんはこの状態だから、この治療がお勧めであると説明されている方は、まだあまり多くないような印象を持っています。
発作を繰り返す方、点滴治療を繰り返す方、園や学校を発作で何日も休む方は、現在の治療がガイドライン通りに行われているか確認する必要があるかもしれません。心配な方は是非受診して頂きたいと思っています。


