先日、ゼーゼーを繰り返す赤ちゃんが当院を受診されたとお話ししました。
赤ちゃんがゼーゼーを繰り返すと「乳児ぜんそく」の疑いがあります。しかし乳児ぜんそくの診断は、アレルギー専門医でも難しい場合があります。
前医で「ぜんそくかもしれない」という診断(?)で吸入器を買うように勧めらて、真偽を当院に確かめに来られたのです。重症の乳幼児のぜんそくには「パルミコート」という吸入薬が適切な治療とされています。ただし、この使用には吸入器が必要なのです。吸入器は2~3万円するものなので、本当に必要なものなら親御さんも迷わないでしょうが、出費はないに越したことはないし、必ず必要なものかどうかは重要な決定になります。
私は、そのお子さんがぜんそくかどうか、ぜんそくだとしたら重症かどうかをまず判断しなければならないと考えました。これまでの経過をこと細かに聞いてみました。吸入器が必要かどうかを尋ねられている訳ですから、地元の唯一の小児アレルギー専門医として期待されているのだと思いました。
その結果、「ぜんそくかもしれない」ではなく“ぜんそく”でした。重症度は、重症とは判断されませんでした。専門施設で学んできましたので、プロの端くれとして、そう診断させて頂きました。もともとパルミコートは重症な患者さんにのみ使う薬なので、今後の経過で必要になる可能性もありますが、現時点では必要ないでしょうと判断しました。
私がアレルギー専門医だという認識が広まってきているようで、その患者さんがご希望されたので、現在は当院で経過を診ています。最初に来られた時はゼーゼーも聞こえていましたが、気管支炎を合併しており、そのせいで重症っぽく見えたのでしょう。気管支炎の治療をしたところ、現在は咳も出なくなったとお母さんも喜んで下さっています。今後は、専門的知識をフルに活かして適切な治療を行っていきたいと思っています。
数日前に、別の赤ちゃんが当院を受診されました。その患者さんは湿疹があり、やはり前医でステロイドを処方され、食物アレルギーの診断で食事の指導を受けていました。アレルギーと言われたので当院を頼って受診して下さったそうです。
診察時は、その時点での皮膚症状しか分かりません。先のケースと同様に過去の皮膚症状を聞き出さなければ情報が得られません。これまでの経過からアトピー性皮膚炎と判断されましたので、そう説明しました。親御さんはちょっとビックリしていましたが、診断がつなければ、次につながる適切な治療ができないからとお話しし、診断根拠を説明してご理解を頂きました。
血液検査が卵白2、ミルク2だったそうです。卵とミルクアレルギーと診断されていました。実は、この値はアレルギー症状を起こすかどうか、判断の難しい値です。私なら食べたり飲んだりして症状が誘発されるのならば、卵アレルギーやミルクアレルギーと診断しています。ミルクも基本的には摂れていたそうですが、アレルギー用ミルクを飲ませるよう薦められていたそうです。
ミルクメーカーも慈善事業ではないため、開発費用もかかっています。ですからアレルギー用ミルクは非常に高価です。先ほどの吸入器の話のように、本当に必要なら親御さんも理解して下さるでしょうが、高いミルクを使わなければならないかまだ分からない状況で、アレルギー用ミルクを薦めるのは慎重すぎる対応ではないかと思うのです。
いつも「食物負荷試験」は大切だと繰り返しています。私の過去の経験で、負荷試験で普通のミルクを飲むと即時型の症状が出ることを確認してから、アレルギーミルクを使う必要があると納得して頂いた上で薦めたこともあります。親御さんに経済的負担を考慮に入れるのも良心的な医療の一部だと思っています。
「食物負荷試験」は慣れない医師がやるにはエネルギーが要ります。私も専門施設で学ばせてもらわなければ、一生やることはなかったかもしれません。しかし、食物負荷試験の必要性を充分知ってしまったし、現実問題としてニーズはものすごくあります。私の一生のライフワークなるであろうと思っています。
ぜんそく治療において吸入器が必要かどうかの判断や、高価なアレルギー用ミルクを買ってもらう必要があるのかの判断は専門医でなければ難しい場合も多いのです。難しいケースは専門医への紹介するということが「ガイドライン」にもそこかしこに触れられています。患者さんの出費を防ぐためにも、専門医への相談が日常的になるようにまずは地元の患者さんに知って頂かなければならないと思っています。


