先週末は恩師の退官記念祝賀会に参加してきたと申しましたが、それに先立ち「記念講演」がありました。
講演の内容は、これまで恩師が関わってこられた小児ぜんそくの病態や治療の変遷についてでした。昭和58年ですから、今から26年前に放送されたNHKの今日の健康という番組で、恩師が小児ぜんそくについて解説しているのですが、今でも充分通用するような内容の話をされていたのには驚きました。
当時、小児ぜんそくは8割は治ると言われていました。しかし、いろいろな論文を読んでいらしたので、6割程度しか治らないという報告もあると述べていました。今でもいずれ治ると考えて、発作時に点滴で一時的に対応されているケースもありますが、ある程度重い患者さんにはキチンとした継続的な治療が必要です。それは現在は5~6割しか治らないと考えられているからです。
現在ではアレルギー専門医の間では、ぜんそく患者さんを管理するのに「肺機能検査」は必要不可欠となっています。これは以前、ここでも取り上げました。恩師が若い頃に当時は珍しかった「肺機能検査」の機械を使って、この研究を始められたエピソードを話して下さいました。「肺機能検査」は実にいろいろはことが分かります。簡単に行える検査なので、私のよく言う「ガイドライン」にも“肺機能検査が正常であることを確認すること”と明記されていますが、新潟県では数施設を除いて、行われていません。上越に「肺機能検査」を普及させるのも私の役目だと考えています。
治療自体も、昔は現在とは常識とされているものが使われていなかったり、強い薬を安易に使っている医師も一部にいたそうです。恩師が中心になって小児ぜんそくの治療法を約3年ごとにバージョンアップさせ、もちろん科学的に根拠があり、重症度別に簡素で分かりやすいものを編み出していった状況もお話し頂きました。これだけ医学が進歩してくると、病態も解明されてきます。その病態を明らかに改善させる方法を治療として用いればいいはずです。それをエビデンス ベイスト メディスン(EBM)といいます。
繰り返し言っているぜんそくを“風邪”、アトピーを“乳児湿疹”と診断したり、重症度に合っていない過小治療で症状が改善できないということはなくさなければいけません。医師はEBMに沿った治療を行う努力をすべきでしょう。
私の恩師は、押しも押されぬ日本の第一人者であり、「アレルギー学」のスペシャリストです。ここでお読みの方に知って頂きたいのは「アレルギー学」という学問があるということです。皆さんのご近所には「小児科・アレルギー科」という看板をよく目にされるのではないかと思います。どの小児科医もぜんそくやアトピーの対応をしていると思います。
しかし、敢えて言わせて頂くと、全員が「アレルギー学」のエキスパートではないといえます。「アレルギー学」という学問は独学くらいではなかなか身につく代物ではありません。前述の「肺機能検査」ひとつをとっても、本を読んでもマスターすることはまず困難です。検査をすればする程次から次に分からないことが出てくるはずです。それをひとつずつ教えてもらい解決していかないと、力にならないと思います。
かく言う私も、まだまだ修行の身と言えます。しかし、恩師から「アレルギー学」の基礎はみっちりと教えて頂きましたので、更に実力をつけていくのみだと思っています。
小児科医なら誰でもアレルギーにも対応しています。しかし、かかりつけで治療しても良くならない時は、小児科医の中に「アレルギー学」を学んだアレルギー専門医がおり、より高度な知識を持った小児科医がいるということを皆さんに知って頂きたいと思っています。「ガイドライン」ではぜんそくでもアトピーでも、食物アレルギーでも対応が難しければ、アレルギー専門医に紹介するように明記されています。福岡では、開業医で治療に難渋するとすぐに専門医に紹介するという役割分担が実に見事に行われていたのですが…。
「アレルギー学」を学んだ専門医は数は多くはいませんが、アレルギーで困った時には力になってくれると思っています。


