小児科 すこやかアレルギークリニック

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母も完全除去
2009年04月15日 更新

昨日も触れましたが、ある医療機関で乳児湿疹、卵アレルギーと診断されている患者さんが治療しても良くならないと当院を受診されました。

乳児湿疹ならたいした治療もなく治るはずですが、ステロイド外用薬が処方されていました。私の認識として、乳児湿疹としては過剰な治療と思いますが、実際はアトピー性皮膚炎でしたので、アトピーとしては過小な治療でした。率直に言って、それが良くならない答えだと思います。

親御さんとしてはアトピーと診断されたくないのが本音だと思いますが、いつも言っている通り、適切な診断があって治療に進めるはずなのに、私が専門のアレルギーは曖昧なままにされていることが多い印象を持っています。私は医者としてはさほど実力があるとは思っていませんが、“正しい医療をやりたい”という気持ちは人一倍だと思っています。人の命が関わっている訳ですから、いい加減なことはやってはならないと考えています。

お父さんも一緒に来られたので、「この子はアトピー性皮膚炎と診断されます」と説明し、どうしたら赤くて痒い皮膚症状を軽快させられるか?について説明しました。あとは症状を見ながら、皮膚症状を安定させる努力を継続することになります。

このお子さんは、乳児湿疹と診断されていたのに卵アレルギーの診断を受けていました。アレルギーの値はさほど高くないのに、母の食事も「卵の入ったものはすべて摂ってはならない」と指導されていました。ご存知の方も多いでしょうが、卵の成分が母乳に移行するからです。前医の指示の通り、お母さんは必死に頑張っていたそうです。

時々言っていますが、今の医学は科学的根拠に基づいた医療を実践することを推奨しています。EBMってやつですね。果たしてこのお子さんに母まで卵を完全に除去する必要はあるでしょうか?。私はそんなことは言えないと思います。過去の経験から言っても、完全除去は必要ないと考えています。そういった途端、母の目から大粒の涙が出てきました。お子さんのためと思い、必死に頑張ってきたのに、そうではないと言われたからでしょう。

アトピーを扱う医師は、こういう場合にはこのように対処するように言われています。まず赤ちゃんのアトピー性皮膚炎を治療します。適切に治療し、皮膚の状態を改善させた上で、お母さんが卵を食べて母乳を与えてみて皮膚が悪化するか、また卵を止めて皮膚が改善するかを確認すれば良い訳です。つまりお子さん本人で、お母さんが卵を完全に除去しなければいけないのか個々のケースで調べれば良いのです。とても分かりやすい話だと思います。

そのためには、アトピー性皮膚炎と正しく診断され、キチンと治療された上で母乳が悪さしているのかどうかを判断すべきです。いたずらに母に「卵は完全除去しなさい」というのはどうかと思います。お母さんが卵を食べて母乳を与えて、明らかに湿疹が悪くなるようなら、お母さんも一生懸命になれるはずですが、そこまでする必要のない除去を強いられるのだとしたら、お母さんが可哀想です。

「明日から卵製品を完全に除去しなさい」と言われたら、大抵の人間がストレスで挫折してしまうことでしょう。スーパーに買い物に行く時も、目を皿のようにして卵が入っているかどうかを確認しなければなりません。楽しいはずの食事が味気ないものになり“ストレス”の原因になるであろうことは容易に想像できます。

ちなみに当院はかなり重症なアトピー性皮膚炎の患者さんが市内や市外からも受診されていますが、ここまで厳しい指導は必要ないケースがほとんどです。ひと通り説明し、お母さんも納得して下さいました。卵製品の濃くないものは、安心して食べていらっしゃると思います。

医師の言葉は重いのです。EBMに沿った、本当にお子さんの病気にとってためになる指導を勧めるのがプロの仕事ではないでしょうか?。

この辺は、アレルギー専門医の領域です。一般の先生には難しいと思います。こういう患者さんほど、技術がものを言いますので専門医に紹介すべきだと思います。分からないものを「分からないから、紹介します」と言ってあげるのも、私は医師の良心だと思っています。

この患者さんはたまたま当院を受診されたから、よかったと思いますが、上越には同じような指導をされている患者さんが他にもいるのかもしれないと思うと気が気でありません。ご心配な方はご相談下さい。その患者さん毎に合った現実的な指導で、ともに歩んでいくような医療を提供していきたいと考えています。