食物アレルギーにおいて食べられるかどうかの判断は、アレルギー検査では判断できないといつも言っています。
「食物負荷試験」をやっている食物アレルギーの専門医は、数値が高くても「食べてはいけない」という判断はしていません。それは数値が高くても卵なり乳製品を摂っても何も起きないことを知っているからです。逆に「食物負荷試験」をやっていない小児科医は、アレルギー検査しか判断材料を持たないということになってしまいます。その差は大きいと言わざるを得ません。
私自身、過去に卵白が「6」なのに卵焼きを食べて何ともないお子さんを診ていました。過去の食事歴から卵焼きを食べられる可能性が高いと判断して、私の目の前で「食物負荷試験」をして、実際に食べられることを目の当たりにしたのです。これは私にとって、大きな経験でありました。これはどちらかと言うと例外でしょうが、「6」だから100%食べられない訳ではないことを表しています。
当院で診ている中に、卵白が「6」なのに卵入りのビスケットなら食べても何ともないお子さんがいます。少しでも食べるものが増えればという一心で、お母さんと相談の上でカステラを負荷しようと考えました。さすがに「6」と高いので、食べられるかどうかは実際に負荷してみないと何とも言えませんが、お母さんも乗り気でした。
普通の小児科医からすれば、何て無謀なことを思われるかもしれませんが、お母さんが一品でも多く食べられるものを増やしたいと思ったように、私も同じ気持ちでした。ビスケットを食べているのですから、それよりもやや抗原性の強いカステラは試す価値は充分にあると考えたのです。
食べ始めてみて、最初は順調でしたが、途中で蕁麻疹が出始め、体を掻き始めました。これでカステラは時期尚早だとハッキリ分かりました。お母さんも「あー、やっぱり」という反応でしたが、私は「次につながる負荷だった」と励ましました。カステラが夢のまた夢ならば、もっと強い反応が出たと思うのです。また時期をみて挑戦しようと思います。
恩師が「逃げない、患者さんの身になって考える、責任を持つ」とおっしゃっていましたが、私がそれに加えるとしたら「親心を持つ」ということでしょう。
小学生の高学年になり、精神的に卵製品を受け付けないお子さんを診たことがありますが、本当に気の毒に思います。こういうことは是が非でも避けなければなりません。当院では、物心がつく前に食べられるようにしたいと考えています。
「食物負荷試験」を人の子だからできると言っている小児科医もいると先日お話ししましたが、「数値が高いから、念のため除去しておきなさい」と言う方が何も起きません。アレルギー症状も起こさないから、何か起きて責任を問われることもありません。時間のかかる「食物負荷試験」をしなくて済むので、手間が省けます。
“親心”を持てば、「1品でも多く食べさせてあげたい」という気持ちが生じてきます。逃げの気持ちもなくなるのではないかと思います。アレルギーのような慢性の病気は、小児科医が“親心”をその患者さんに抱くことで、その先が開けてくるのではないかと考えています。


