いきなりですが、当院では基本的に成人のアレルギーの患者さんはお断りしています。
以前も書いたのですが、世の中にはお子さんのアレルギーが適正に診断されておらず、的確に治療もされておらず困っている方が沢山います。そういうお子さんによりよい治療をするのが小児アレルギー専門医の役目だと思っています。大人の患者さんの症状を和らげるのも大切ですが、私は小児科医なのだから、お子さんの症状を優先して治療すべきだと考えています。
先日、“成人”のアトピーの患者さんが受診されました。これまでいくつかの医療機関で治療を受けてきたそうですが、次第に通院しなくなったそうです。医師からみれば、「通院してくれていれば…」と考えるはずですが、患者さんもアトピーが改善せずに困っている訳ですから、そうなってしまう“理由”があるのではないでしょうか?。
1990年代にアトピー性皮膚炎にステロイド軟膏を使うことの是非が社会問題になりました。「ステロイド=悪者」と未だにお考えの方もいらっしゃると思います。しかし、若いお母さんにステロイドの話をしても、ピンと来ない方も多くなってきました。
成人のアトピーの患者さんは、子どもの頃からアトピーだった可能性が高いので、当時のステロイドの騒動はご存知だろうと思います。病院に行けば、患者さんが納得し切れていないのに、ステロイドを出されているケースは少なくないと思います。先程の“理由”とは、このことである可能性は高いと思っています。
もともと成人のアトピー性皮膚炎は難治性なので、ステロイドのことをキチンと理解して使って頂かなければなりません。不安が残っているなら、それを取り除くべきでしょう。
今の時代、「黙って俺についてこい」という親分肌の医師は流行らないでしょう。キチンと説明し、患者さんの様々な不安を取り除く努力をし、共に病気を克服しようとする姿勢が大切ではないでしょうか?。
冒頭の大人の患者さんが受診された時に、皮膚を見てステロイドに対して誤解をお持ちなんだろうと察しました。年齢から言っても、ステロイドの騒動の渦中にあったと思われ、ステロイドに対する不安を取り除くべきではないかと考えました。
患者さんに「ガイドライン」をお示しし、今のアトピーの治療はこうなっているんですと理論的に説明したつもりです。私の話を聞いての第一声が、今日のタイトルの言葉だったのです。
私が信頼に足る医師かどうかは、今後の治療効果にもよるのでしょうが、少なくとも「頼られたからには、自分の技術で何とかしなければならない」と思いました。顔から首にかけても湿疹がありました。専門医ならよく使っている、「プロトピック軟膏」も使われていませんでした。ステロイドとは異なる薬なので、ステロイドの副作用を抑え込むことができると理解しています。自分の知識と技術で対応させて頂こうと思っています。
別の患者さんですが、私が診ている食物アレルギーとアトピーのお子さんのお母さんも実はアトピーがあり、過去にご苦労されたようでした。初診時にお子さんの治療を説明した際、「ステロイドは使いたくない」と宣言されていました。汗をかく季節になってきて、皮膚症状が悪化してきたため、再度ステロイドの説明を丁寧にしたつもりです。そうしたら、やはりタイトルと同じ言葉を言われ、ステロイドでの治療を了解して下さいました。
だいたい小児科も皮膚科の診察はあっという間に終わってしまいます。往々にしてステロイドに対する説明は充分ではないと予想されます。未だにステロイドに対して拒絶反応を示す患者さんは少なくなく、当院でじっくり時間をかけても拒否される方もごく一部ですがいらっしゃいます。それはどうしようもないことだと思っています。しかし、ちょっと食わず嫌いのようになっていて、キチンと理解した上でステロイドの恩恵に預かれる患者さんは、実はかなり多いのだろうと思っています。それは不幸なことです。
ステロイドのことを時間をかけて説明しなければ、「ガイドライン」の推奨する治療が充分に広まらないと思っています。私よりもアトピーの治療に精通した、周囲では名医と言われているようなアレルギー専門医は全国には沢山いると思います。私は名医でも何でもありませんが、誰かがこういった地道な対応がしなければいけないと思うし、こういうことなら私でもできます。それも私のやらなければならない役目のひとつだと思っています。


