当院は、市外からはるばる受診して下さる方々が後を絶ちません。
そういう患者さんはアトピー性皮膚炎や食物アレルギーが多いようです。患者さんはまだ乳幼児のことが多く、とても心配された状態で受診されています。
先日、受診して下さった患者さんはN市からいらっしゃいました。赤ちゃんに湿疹があったため、人気の皮膚科を受診されたそうです。乾燥肌と診断されて、ステロイド軟膏が処方されたそうです。ステロイドに対する説明もなく、また症状の改善も思わしくなかったため、通院を止めて市販の保湿剤を塗っていたそうです。
当院に来られた理由は、食物アレルギーを心配されたお母さんがお子さんの離乳食を開始するに当たり注意点がないかどうかを聞きたかったそうです。
お母さんにしてみれば、皮膚科の医師でも食物アレルギーの相談に乗ってもらえると思われていたことでしょう。採血によるアレルギー検査は9か月からだと説明されたそうです。アレルギー専門医の間では、アレルギー検査は3~4か月から調べることが多いのです。のちに陽性になるにしても、1~2か月だとまだ陰性のことが多いからです。9か月というのは根拠がないと思います。
このお子さんの場合は、アトピー性皮膚炎と診断されていなかったので、医師が多分食事は関係ないでしょうと言ってあげれば、お母さんの不安を取り除くことはできたかもしれません。
実際に過去の状況をお聞きし、診察させて頂きました。皮膚症状が軽快していたので断定的なことは言えませんが、アトピー性皮膚炎が疑われる状況でした。だとすると食物アレルギーを合併している可能性も出てきます。生後4か月以上だったので、アレルギー検査は行うことができます。
まだ離乳食開始前なので、アレルギー検査で卵やミルク、小麦などの食品に反応のが出ていれば、これらにアレルギーを持っている可能性が示されます。検査が陽性でもすべてがアレルギーという訳ではありませんが、離乳食を与えるに際し、参考にすることができます。これらのことを時間をかけてひと通り説明すると、だいぶ私を信頼して下さったようです。
お母さんは私の説明を聞いたあと、「全然違いますね」とおっしゃっていました。私だって、専門施設でアトピーや食物アレルギーのことをこだわって学ばせて頂きました。専門でない先生よりは、より深く診療しているつもりです。遠くから受診して頂いていますし、「どこも同じだ」と思ってもらっても困ります。“違い”を分かって頂いてちょっとホッとしました。
皮膚科の先生も乳児のアトピーは日頃から診察されているはずです。アレルギー検査で卵やミルクなどが陽性になりやすいことはご存知だと思います。ただ、食物アレルギーは専門外なので、あまりお詳しくないと思いますので、よく分からなければ、小児アレルギーの専門医に紹介して頂きたいと思っています。
今回は、お子さんにより良い対応をしてあげようと心配されて受診して下さいました。お母さんのご心配は、もっともなものだと思います。空気を読んで、その気持ちに答えようとしたつもりです。親御さんの疑問に思うことはだいたい共通していますので、こちらから先にお話ししました。最後に確認しましたが、ほぼご理解頂いたようです。
「医療」は、薬を出して終わりではないはずです。お母さんの心配も取り除くことも、医師の役目です。時間をかけるべき患者さんにはかけて、育児に忙しいお母さんの不安を少しでも軽減するよう努力も必要なのだろうと思っています。そういった姿勢も含めて“違い”を理解して頂けたのだとしたら、日頃の努力が少し報われた気がします。


