小児科 すこやかアレルギークリニック

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母が失職
2009年07月27日 更新

先日、診療の最中に久々に落胆半分、怒り半分という気持ちになったことがありました。

ある医療機関でぜんそくと診断されているにもかかわらず、発作を繰り返していたため、当院に救いを求めて受診されたそうです。

発作の頻度は1か月に1~2回はゼーゼー、ヒューヒューいって眠れない日々が数日続いていたそうです。あるアレルギー科に通院していたのですが、これだけの発作頻度だったそうです。

私のよく言う「ガイドライン」では、発作の頻度が多ければ予防的治療と言って、ぜんそくの治療を継続的にするように推奨しています。これまで一体どんな治療がなされたきたのかとお母さんに聞いてみました。

元主治医は「点滴が一番の治療で、発作を起こしたら、点滴に来なさい」と言われていたそうです。そして、発作の時の治療は気管支拡張剤の貼り薬(ツルブテロール)が使われていました。風邪を引いて発作を起こした時にはミドシンというマイコプラズマなどの感染症に効果があるとされる抗生剤の点滴を繰り返されていました。アレルギーのプロから言わせて頂くと、ぜんそくの治療は充分とは言えないと思います。他にも有効な治療法はあると思います。しかし、専門医ではないので仕方がない部分もあるでしょう

実は、お母さんもぜんそくを持っていて、呼吸器内科の専門の先生にかかっていました。調子の悪い悪くないに関わらず、症状を安定させるために吸入薬を使い続けていたそうです。さすが大人のぜんそくのプロだけあって、成人ぜんそくの「ガイドライン」通りの治療をされていました。

そこで、お母さんには疑問が芽生えました。ご自分は予防の治療をしていて、調子がいいのに、かなりの頻度で発作を起こしている子どもは「なぜ同じような治療をしないのだろう?」と思い、元主治医にご自分と同じような治療はしないのかと聞いてみたそうです。

その答えはこうでした。「子どもは大人みたいに吸入薬は使わない。発作を起こしたら点滴が一番効く治療だ。」と言われたそうです。

当院は「ガイドライン」に忠実な治療を行っています。発作を繰り返すお子さんに吸入薬を処方し、発作を起こさなくなることはよく経験します。発作を起こしませんので、夜眠れなくなったり、強く咳き込むこともほとんどなくなりました。発作を起こさないので、点滴という緊急で痛い治療はする必要がなくなるのです。当然ながら、お母さんも仕事を休まなければいけないこともなくなります。

二人の医師が違う方針を打ち出すと、素人である患者さんはどちらの言うことが正しいのか迷ってしまうと思います。しかし、敢えて言わせて頂きますが、この医療機関の先生と私の言うことどちらが説得力があると思われますか?。よく言うように、医院は何度も受診してくれて点滴などの処置が増えれば売り上げが上がります。当院は良心的に治療していますので、症状が安定してくると、月に1回受診されるのみです。点滴もしませんから、こういう言い方は好きではありませんが、必要最低限の医療費しかかからないということになると思います。

話に続きがあるのですが、あまりに発作を起こし、その都度点滴に通うように指示されたいたので、そのたびに母は職場を休まざるを得ませんでした。あまりの頻度に、せっかく見つけた職場をクビになってしまったそうです。

「ガイドライン」によるとこのお子さんは、軽症持続型に当たり、予防的治療をしなければならない状況でした。ぜんそくは発作を繰り返せば繰り返す程、発作を起こしやすくなる特徴があります。今回のケースも予防をしなかったから、重くなっていったのです。それが原因で母が失職するに至ってしまったのです。「ガイドライン」通りの適切な治療を治療をしていれば、こんなことにはならなかったはず。お母さんもお子さんも気の毒でなりませんでした。

お母さんには「ガイドライン通りの治療をします。今までみたいに発作は起こさせませんから。」と説明して、納得して頂きました。一般的には患者さんのその時の症状を診察した医師が治療を判断するので、その医師に治療の決定権があります。しかし、母が失職する程、発作を繰り返していたのであれば、治療は適切であったとは言えないと考えています。

患者さんは病気で苦しんでいます。医師は、プロなんですから患者さんに最善の努力をすべきです。困っている患者さんを見ると、医院への収入なんてどうでもよくなります。こういう話を聞くと、アレルギー科の標榜は「ガイドライン」に沿った治療ができる医師しか許されないようにすべきではないかと思ってしまいます。

医院は、病気を治したり、症状を軽くするのが仕事です。しかし、真面目に治療して病気がよくなると患者が少なくなり経営を圧迫します。とても不思議な商売だと思います。それでも、当院は点滴をしなくていいようなぜんそく治療を心掛けていきたいと思います。多分、1年半くらいはぜんそく発作で点滴はしてないと思います。私は、ただ「ガイドライン」に沿った治療をしているだけなのです。以上の話で、予防もせずに「発作の時に点滴が一番良い治療だ」という話が正しくないことはご理解頂けたと思います。

上越市内には発作をかなりの頻度で繰り返し、それを仕方ないと思っていらっしゃる患者さんは他にもいるはずです。「点滴が一番」と納得されている患者さんは他にも少なくないと思います。こういった患者さんに適切な治療を提供するのが、私の役目だと考えています。

周囲にしょっちゅうぜんそく発作で園や学校を休むお子さんがいたら、今回のような治療不足である可能性があります。是非、ご相談して頂きたいし、そういう患者さんは往々にして発作を極めて起こしやすい状態になっていますので、アレルギー専門医が対応するのがベストだと思います。