小児科 すこやかアレルギークリニック

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マイコプラズマは調べるけれど
2009年10月06日 更新

「RSウィルス」という怖くて、注意すべきウィルスがあります。

乳幼児がかかると入院してしまう確率が結構と高いのですが、一般の方には麻疹や溶連菌、マイコプラズマよりはあまり知られていないと思います。

感染すると、ぜんそくでもないのに強い咳込みがみられたり、夜に眠れなくなるような強い症状を起こします。高熱が続くこともあります。初期や軽ければ風邪や気管支炎などと区別がつきませんが、重くなってくるとゼーゼー、ヒューヒューいってぜんそくと似たような症状になります。

当院は呼吸器疾患にこだわって診療していますので、RSウィルスには特に注意して見逃さないようにしています。重症化すると最悪のケースで死亡に至る乳幼児もいるのです。

RSウィルスは、インフルエンザに対するタミフル、マイコプラズマに対する抗生剤のように特効薬がありません。いわゆる咳止めや痰切りといった薬を使うことになりますが、オノンなどの抗アレルギ―薬が効果的な場合もあります。積極的な治療薬がないからこそ、早く見つける努力が必要なんだろうと考えています。

実はその他にも別の困ったことも起きてしまうのです。一度かかってしまうと、赤ちゃんの柔らかい気管支に傷をつけてしまい、とてもゼーゼーしやすくなってしまいます。外国の論文によると、赤ちゃんの時にかかったにも関わらず、その後10年以上はぜんそくのようにゼーゼーを繰り返してしまう可能性が高いのです。お子さんが別の原因菌で肺炎になって1週間入院しまうのも心配ですが、そんな1週間程度のものではなく、10年以上も悪影響を及してしまうのです。ですから尚更、当院ではRSウィルスは見逃さないように努力しています。

検査自体は簡単です。ここ最近、お子さんが熱を出すと新型インフルエンザを心配し受診されるケースが多いですが、細い綿棒を鼻の奥に差し込んで検査してもらった経験のある方も多いと思います。実はこのRSウィルスも全く同様のやり方で、ほんの15分程で診断できるのです。

しかし、この検査は特に開業医ではあまり行われていません。何故なら、保険診療では入院患者しか認められていないからです。つまり、外来で検査すると検査料が医院の“損”になります。

当院では、患者さんに起こっている病態を解明するために、患者さんへの指導のために“自腹”を切るのはやむを得ないと思っています。「武士は食わねど高楊枝」だと思います。

RSウィルスは軽いと鼻水程度のこともありますが、これだと風邪と全く区別がつかず、見逃されることは致し方ないと思います。しかし、乳幼児で咳込みが強く、肺の音が悪かったり、喘鳴が聞かれれば可能性は高まります。怖い病気なので、小児科医ならある程度積極的に調べるべきだと思います。しかし、「損をしてまで調べたくはない」という考え方もあるようです。

マイコプラズマなどの検査は請求できます。RSウィルスだけが保険診療で認められていない特殊な状況にあるのです。ですから、マイコプラズマは調べるけれど、RSウィルスを調べないなんてことが起こるのです。この辺は小児科医のポリシーによるでしょう。あくまで私の考え方ですが、RSウィスルを心配して調べてくれる小児科医は、キチンと病態を解明しようとしてくれるタイプの先生だと思います。

実は、RSウィルスは数年に1度の割合でかなり流行しています。入院する赤ちゃんが急増し、ベットが足りないくらいの騒動が起きたこともあります。一般的に、秋から春にかけて多いと言われています。ちなみに、昨年は上越でどういう訳か夏に流行りました。それは当院でも確認していますし、何人の赤ちゃんが酸素不足で呼吸困難を認めましたので、病院に紹介し入院加療してもらいました。そして、先日も感染者が一人いました。ということは、いま上越で強い咳込みのみられる小さなお子さんはRSウィルスのせいかもしれないのです。

小児科の医院で自身のホームページに感染症情報を載せているところもよく見かけます。ところが、上越地方のある地域にはRSウィスルがほとんどいないことになっています。医師側の都合でRSウィルスが調べられていないのなら、誰のための感染症情報なのだろうかと思います。

当院には毎日のように、治療しても咳が止まらないと親御さんがお子さんを連れて初診されます。過去の状況を聞くと「赤ちゃんの時にゼーゼーいって入院したことがあり、その際にRSウィルスを診断されました」と言われることはよくあります。当院でRSウィルスと診断して、その後咳が長引きやすいこともかなりの確率でみられます。

このように、ぜんそくを専門にする医師にとっては、憎きウィルスなのです。新型インフルエンザの脅威が注目されていますが、ワクチンやタミフルがあるため、そういう意味ではRSウィルスの方が嫌らしく、危険とも言えます。特に小さいお子さんを持つ親御さんには、RSウィルスの怖さをよく知っていて頂きたいと思っています。

ゼーゼーを繰り返しても“風邪”や“マイコプラズマ”と診断されていることも少なくなく、RSウィルスが原因にもかかわらず診断されていないケースも少なからずいると思います。もしかして、医師が調べないからRSウィルスの認知度が上がらないのかもしれません。私はこれからも時々、この場でRSウィルスの怖さに触れていきたいと考えています。

やはり「武士は食わねど高楊枝」の精神で、我々小児科医が患者さんのために正しく診断し、正しい情報を流すように努力すべきだと思っています。