小児科 すこやかアレルギークリニック

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名医と呼んで下さい(笑)
2009年10月09日 更新

先週、自分でもあまりに狙い通りでビックリしたことがありました。

あるお子さんが「咳」で初めて受診されました。他院で治療していても「咳」が止まらないと、当院にご指名で来られることが多いように感じています。信頼を寄せて頂いて有り難いと思っています。

開業医は風邪を診る機会が多いので、「咳」で受診すると「風邪だね。風邪薬を出しておきます。」と言われることが多いと思います。一般的な小児科外来は、確かに風邪がほとんどなので、いわゆる風邪薬を飲めば治ることが多いことでしょう。

しかし、いろんな病気で「咳」は出ます。治らなければ、「風邪じゃないんじゃないか?」と考えなければなりません。実は当院は、風邪の患者が少ないのです。

当院の「咳」の場合は、ぜんそくが多いのです。勘違いして欲しくないのは、強く咳き込んで、ゼーゼー、ヒューヒューというぜんそく発作を起こす子は極めて少ないのです。だいたい、患者さんがゼーゼーしやすいかどうか分かるので、先手を打っています。最近は秋という気候もあって、ちょっと調子を崩して軽い咳が出ていることが多いと思います。

その患者さんは、以前からゼーゼーを繰り返しており、明らかにぜんそくと診断されるべきですが、ある小児科で気管支炎と診断されていました。ぜんそくの患者さんが咳が長引いて受診されれば、ぜんそくのせいだと疑うのは当然です。

実際に、診察室でも咳がひっきりなしに出ています。これは、普通の小児科でもよく見られる光景だと思います。しかし、私は気付いていました。「これは風邪の咳じゃない。ぜんそくの咳でもない。」と。

福岡の専門病院でトレーニングを受けてきた賜物かなと思っていますが、やはり医師は、診察室では感覚を研ぎ澄まし、直感的に嗅ぎ分けることも大切だと考えています。

診察室のおもちゃで遊んでいるお子さんの「咳」に気をつけならが、お母さんから過去の様子や、今回の咳の出た状況をお聞きします。「ははーん、ぜんそくがあるんだな」と思い、お子さんの咳がぜんそく特有か確認します。ぜんそくの特徴を満たしていれば「これはぜんそくの咳なので、風邪薬は効きません。」と言えばいいのです。

でもちょっとおかしい。母から家での咳の出具合を聞いてみると、やっぱりぜんそくの咳と合致しないのです。ぜんそくのお子さんが咳が長引いていてもです。

このお子さんの咳は、口先だけの咳でした。ぜんそくだと痰がらみのことが多い。しかし、痰が絡まないからと言って、ぜんそくを否定できるものではありません。話を伺うと、ぜんそくが最も悪化しやすい夜から朝にかけて咳が全く出ていません。秋が深まる中、日中これだけ咳をしていて、夜に出ないのはおかしいと感じたのです。よく観察していると、ひっきりなしの咳が止まることがあります。それは遊びに夢中になっている時です。

私はお母さんにこう言いました。「この子はぜんそくがあるけれど、結論から言うとぜんそくの咳ではないでしょう。心因性咳嗽といって、何らかのストレスがそうさせていると思いますが、家や学校で何かトラブルはないですか?。」

初めて会う人に「ストレスで咳が長引いている」なんて言うと、場合によっては「この医者、当てになるのかな?」と思われてしまいます。うさん臭い診断と思われ兼ねません。もちろん、風邪やぜんそくの咳の特徴をお話しし、お子さんには当てはまらないことを説明します。更に私が診てきた心因性咳嗽の子の状況を話して、咳の特徴が一致していることをご理解頂きました。

しかし、お母さんは少なくとも家ではストレスの原因を把握しておらず、チンプンカンプンで逆に不安そうです。「学校でもトラブルがないか学校の先生にも相談してきて下さい」とその日は別れました。

1週間後再診して頂きましたが、咳は止まっていませんでした。学校の先生にも相談に乗ってもらったそうですが、学校でも特にトラブルはないようだということでした。しかし、家でも咳の状況をよく観察して頂きましたが、やはり心因性咳嗽の特徴と一致しており、誘因はハッキリしませんが、私は診断が間違いないことを確信していました。「お子さんがSOSを出しているので、“何か”を見つけたいですね」と話していました。

3回目受診された時にお母さんから「咳が止まりました。ストレスの原因も分かりました。」と笑顔で報告を受けました。この場合、咳止めなど薬を飲んでも意味はないので「必要のない薬を飲み続けさせずによかった」とも言われました。

実は、家でも学校でもないところに原因があったのです。親御さんがお子さんに良かれと思ってやらせていた“あること”があるのですが、本人はそれが嫌で嫌で仕方がなかったそうです。お母さんにそのことを「ボクは嫌だんだー」と泣きじゃくりながら一気に思いを吐き出したのだそうです。お母さんもそこまで嫌だったとは認識しておらず、思いもよらない息子の反応にビックリしたとおっしゃっていました。それ以来、咳がピタリと止まったのだそうです。

私自身も何かあるとは思っていましたが、もしかしたら迷宮入りするかも思っていた矢先のことだったので、あまりの予想通りの結末に、お母さんについ「名医と呼んで下さい」と言ってしまいました(笑)。

以前、耳鼻科や小児科で診ていた「咳」が実は心因性咳嗽だったことがあります。経験しなければ、区別は難しいと思います。小児科医はプロなんですから、子どものSOSをなるべく早く察知したいものです。