先日、上越市の1歳半健診に行ってきました。
歩けるか、しゃべれるか、心配していることはないかなどをチェックしていきますが、問診票の欄外に「ゼーゼーする」と書いてあるとどうしても見逃せません。職業病でしょうか?。
1歳半にもかかわらず、ゼーゼーを繰り返していました。れっきとした小児科に通っていましたが、治療してもゼーゼーが取れないので、医師の指示でそのまま様子をみているのだそうです。
その話を聞いて、ビックリしました。赤ちゃんは普通はゼーゼーしないし、咳で目覚めることもあるそうです。それを様子をみるだなんて、専門医の間では考えられないことです。健診ではありましたが、明らかにぜんそくと診断されること、ゼーゼーを取る治療をしなければならないこと、こういうお子さんが新型インフルエンザにかかったら呼吸困難を起こして入院する可能性が高いことをお話ししました。こういう対応を受けている患者さんは他にもいるかもしれないと思うと、心配でなりません。
11月2日から新型インフルエンザのワクチンがぜんそくなどの基礎疾患を持つ患者さんから始まると言われています。アレルギー専門医からみれば、とてもゼーゼー言いやすく、あまり抵抗力のないこういった赤ちゃんこそが最優先で新型ワクチンを受けるべきです。とても気の毒なことだと思いますが、この赤ちゃんはその医院では新型ワクチンの候補にも挙がらないでしょう。
こういうゼーゼー言いやすいクセのついた赤ちゃんの治療は、専門医でもすぐには消せないこともありますが、1日でも早く適切な治療を受けるべきでしょう。こういう患者さんは抱え込むのではなく、アレルギー専門医に紹介してもらわないと困ります。患者さんも困り果てていました。市の健診では「うち(当院)に来て」と言うのは御法度になっています。このお子さんが、明日からキチンと治療され、ワクチンが受けられるよう願っています。
ここで、ある懸念が頭をよぎりました。
重いぜんそくが見逃されている場合、新型インフルエンザにかかると間違いなく重症化するでしょう。これは以前も触れました。今回思いついたのは、医院間の差です。
どういうことかと言いますと、当院では軽いお子さんから重症なお子さんまでかなり多くのぜんそく患者さんを診ています。冒頭の赤ちゃんのように、治療してもじきにゼーゼーしてしまうような重症な患者さんも多く診ています。
数日前に県知事が自信満々に言っていたこととは裏腹に、11月2日に新潟県に入ってくる新型ワクチンは情けないくらい少ない本数です。つまり、当院にも背筋が寒くなる程度しか入荷しないだろうと思っています。となると、当院の選りすぐりの重症なゼーゼー言いやすいお子さんを最優先して接種するしかありません。当院には重症なお子さんも多いので、更に重症度の高い一握りの患者さんを対象にせざるを得ません。
当院は開院して2年になりますが、上越には子どものアレルギー専門医が不在だったため、開院とともに当院をぜんそくの主治医と頼ってくださる患者さんが大勢いらっしゃいます。場合によっては、他の医院に通っていたにも関わらず、ぜんそくと診断されていなかったり、診断されていても過小治療で症状が安定していなかったお子さんも、ガイドライン通りに診断し、治療することでぜんそくのない子と変わりのないような生活が送れるようになっています。当院には、重症なお子さんが他の医療機関よりも多いのです。
新型ワクチンの各医療機関への配分が、季節性インフルエンザの割合で配分しようとする動きもあると述べました。他の医療機関で新型ワクチンが多く配分された場合、軽いぜんそくの患者さんが接種できる可能性があります。一方、当院はただでさえ少なくしか配分されずに、しかもごく一部の重症な患者さんしか接種ができないことになってしまいます。
本来、国が基礎疾患のある患者を優先した目的は「死亡者や重症者の発生をできるかぎり減らすこと」のはずです。医院間のぜんそく患者さんの人数や重症度の差で、優先されるべき患者さんが優先されない可能性が高いことを忘れてはいけません。その辺をどう配慮してもらえるのでしょうか?。
ワクチンがなければ、あるところに優先接種証明書のようなものを出せば打ってもらえるのかもしれませんが、自分のところで診ている患者さんを優先するでしょうから、後回しになる可能性があります。またぜんそくが重ければ、卵など重症な食物アレルギーが合併しているケースも少なくありません。接種医はリスクを避けるために、なかなか打ってもらえないと思っています。
基礎疾患というのはぜんそくだけでなく、慢性心疾患、慢性腎疾患、神経疾患、染色体異常なども含まれますが、圧倒的に多いのはぜんそくでしょう。ぜんそくを専門的に診ている病院•医院は県内には少数しかないため、ある程度は配慮しているような形を望みたいと思っています。
このページをご覧ください。新潟県内の学級閉鎖の状況を表したものです。上越市内は現時点ではないようですが、県内に確実に新型インフルエンザの魔の手が伸びていることがご理解いただけると思います。
http://2009influ.pref.niigata.lg.jp/kyoikusomu/1252270904245.html
相変わらず、県からは何日に何人分の新型ワクチンが入荷するという連絡はありません。患者さんの動揺を招くつもりはないのですが、我々現場の人間も考えれば考えるほど、不安になってしまいます。
当院で診ているぜんそく患者さんは私が守らなければならないと思っています。この状況で何もできない自分が歯がゆいのですが、新型の本格的な流行が遅れることと、新型ワクチンが適正に配分されることを祈っています。


