小児科 すこやかアレルギークリニック

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嵐のコンサートチケット並み
2009年11月16日 更新

日曜は東京でアレルギーの勉強会がありました。

小児ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎に関して日本の第一人者の先生方が講演されていました。新潟県はアレルギー専門医が少なく、今回も参加者は新潟からは5人程でした。上越地方からは私だけでした。

今回取り上げられたいずれの4つの病気とも「ガイドライン」があり、その通りに治療を進めれば、プロ並みの治療ができるのです。私はぜんそくの「ガイドライン」を作った先生の元で研修させて頂きましたので、その内容はだいたい理解しているつもりです。今は「ガイドライン」に沿った治療が“医学的根拠”のある治療だとされています。やはり医師は、我流ではなく、“根拠”のある治療を行うべきです。

先日、某県某市の親御さんからメールを頂きました。

“あるもの”を手に入れようと、予約開始の日に家事そっちのけで電話をかけ続けること5時間。全く電話がつながらないので、その日は諦めたそうです。翌日も電話が通じないので、受付に直接行ってみると沢山の車と人、人、人。整理券を渡され3~4時間後にようやく予約が取れたそうです。さぞかし嬉しかったことでしょう。

さて、この“あるもの”とは何でしょう。いま最も入手が困難とされているジャニーズの嵐のコンサートチケットではありません。新型インフルエンザのワクチンの予約だったのです。

新型インフルエンザのワクチンは、10月19日に医療関係者、11月2日から妊婦と基礎疾患のある患者さんから優先的に接種が始まっています。3番目に優先される1歳から小学3年までの低年齢のお子さんのワクチンは12月14日からとされていましたが、子どもがインフルエンザ脳症で亡くなるケースが少なくないため、国が各都道府県に子ども達の接種を12月14日でなく前倒しするように指示を出したそうです。

しかし、新型ワクチンの供給が安定しておらず、各都道府県に足並みの乱れがあります。つまり前倒しができるところとできないところがあるようです。ここ新潟県でも前倒しを検討しているものの、23000回分が不足していると言われています。

親御さん達は血のにじむような努力をして予約を取られたはずです。しかし、供給されるかどうかも分からない予想のもとに予約を開始していると思われますが、供給が遅れる可能性が高いと思います。もしそうなった場合、その医院はどうやって責任を取るのでしょうか?。親御さんの切なる願いを裏切ることにならないでしょうか?。それこそ嵐のコンサートはまたあり、次回はチケットが取れるかもしれません。病気とコンサートは次元の違い過ぎる話なのです。

当院の場合は、ぜんそくの患者さんが極めて多く、今はぜんそくなどの基礎疾患を持つ子ども達に接種するのが精一杯です。少なくとも新潟県では、基礎疾患のない子のワクチンの予約を始めている小児科はないはずです。真面目な小児科医は、見通しの立たない、“根拠”のないことはやりたくないという考えのもとだと思います。

医療は、信頼関係が最も大切だと思います。他院で治療されて、良くならないために当院を受診され、診断が違っていたり、治療が過小だったりしていたのを見抜いて症状を改善させると、ほとんどの方が私のことを信頼し、そのまま通院して下さいます。医師は、患者さんからの信頼を裏切ってはならないと思います。そのためにも、“根拠”のないことはすべきではないのです。

どの親御さんも、今は新型ワクチンの予約を取りたくて気が気でないと思います。そんな中、予約を始めれば、嵐のチケット並みの競争になるのは容易に理解できます。某県某市の医院が、万全な体制を取らずに予約を強行した真意はよく分かりませんが、私にはビジネスの香りがします。もう少し待てば、他の医院でも予約を開始するため、ここまでの過剰な競争にはならなかったはずです。私の予想が正しければ、患者心理を突いたやり方に思えます。

考え過ぎだとおっしゃる方もいるでしょう。しかし、少なくとも当院では、健康な1歳から小学3年までのお子さんの予約は始められる状況ではありません。それはぜんそくのお子さんの接種が忙しいのもありますが、それだけではなく、未だに何日に何人分のワクチンが供給されるという明確なものがないからです。それは全国どの医院でも状況は変わらないはずです。

予約通りに接種ができればいいのですが、できなければお母さん方の心情を考えると「ごめんなさい」では済まないと思います。できなかった時の反発を予想しているのでしょうか?。私なら信用を失墜させてしまう可能性があれば、今後上越で医療をできなくなると思うので、怖くてできません。仮に多くの収益を上げることができても、嬉しくないでしょうね。

医学は、人の命や健康を扱う職業です。信頼関係も重要ですから、なおさら“根拠”のないことは行うべきではないのです。

当院は、先日から基礎疾患を持つお子さんへの新型ワクチンを本格的に始めました。当院は重症な患者さんを多く診ているため、重症な子ども達を優先する方針であることを他の親御さん達に繰り返し説明し、理解を求めています。

ネットニュースで読んだのですが、ある透析患者が多い病院でワクチン不足のために、接種者をくじ引きで選ぶ方法を選択したことが話題になりました。いろいろ考えたそうですが、結局それが公平(恨みっこなし?)だと考えたそうです。

重症な場合は「ガイドライン」通りに治療しても、ゼーゼー言いやすく、息苦しくなったり、眠れなかったりしています。親御さんも臨時で受診したり、まめに通院せざるを得ないこともあります。好きで病気になった訳ではないし、日頃からご苦労されているのです。接種したくて仕方ない親御さん達に、私はこう考えていると“根拠”を示せば、比較的理解は得られやすいのだと思っています。

私は治療にしても、今回の新型ワクチンの優先方法にしても、“根拠”を持ち熱心に説明すれば患者さんにはきっと通じると思っています。逆に医療にしても、何にしても“根拠”のないことをする医師は存在します。その証拠にすべての医師が「ガイドライン」通りの治療をしていれば、患者さんがわざわざ当院に来られる必要はないと思うのです。

“根拠”のあることをしたいという良心というか、医師のプライドが医師の本質を見抜くポイントにもなると思いますし、“根拠”のあることをする医師が最後に患者さんから信用されるのだと信じています。