小児科 すこやかアレルギークリニック

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開業医の役割
2009年12月08日 更新

週末に学会のため、強行軍で福岡に行ってきました。

家に着いたのが6日(日)の23時でした。そして7日(月)、通常通りの診察をこなさなければなりませんでした。

学会で土曜を休診にしたため、当然のように月曜の診察は混んでいたのですが、そんな中で急患が入りました。もちろん最優先でそのお子さんの対応に当たらなければなりません。

診療を一切ストップして治療に当たりましたが、治療に対する反応も思わしくなく、入院治療する必要があると考え、希望される病院へ紹介状を書きました。開業医は時間との戦いになりますが、救急車が到着するまで付きっきりで対応していたので、すべてが済むのに50分くらいかかりました。その結果、40人待ち…。

そこで浮き足立っても仕方ないし、待って頂いた患者さんを流れ作業でいい加減に対応するのも筋が違うと思っています。コツコツと対応していきました。お陰で、夜に診療が終わる頃にはヘロヘロでした。学会で頭はリフレシュしてきたつもりが、体は疲れたままです(涙)。医者って“肉体労働者”なんです。

受付の順番通りに対応するのが正しいのですが、トリアージといって具合の悪いお子さんが受診すると、重症なお子さんを最優先して対応しなければなりません。患者さんには待ち時間が長くなってご迷惑をお掛けしましたが、これだけは致し方ありません。

それにしても、外来が混雑する中、急患が入ると、誰も助けてくれません。つくづく開業医は孤独だと思いました。

さて、小児アレルギー学会は毎年参加していますが、盛況でした。多くは大学病院やスタッフのそろった専門病院の専門医開業の先生でしたが、県外の開業の先生も結構見かけました。なお、新潟からの参加者は決して多いとは言えませんでした。

日常診療の中で、疑問点はいろいろと湧いて出てきます。ましてや当院の場合は、他の医院で治療しても良くならないと当院を受診されることが多いのです。学会で勉強しておくことは必要不可欠だと思っています。

診療を休むと収入が減るという医師は存在します。開業医は設備もなく、頼れるのは自分だけなので当然すべてに対応できる訳ではありません。自分のやれることの限界を知っていなければなりません。疑問点があれば、そのままにしておいて、知ったかぶりの対応をするのは避けなければなりません。

敢えて言わせて頂きますが、開業医は二極化していると思います。技術を売るのが仕事ですから、真面目に勉強して最新知識を得ようと努力している医院と、患者を集めて点滴などの処置を多くし、何度も通院させるような売り上げを意識した診療している医院です。患者さんにはそれを見極める目を持って頂きたいのですが、端から見るとなかなか難しいのでしょう。

先日、ある小児科でマイコプラズマと診断されていたお子さんが治療しても良くならないと当院を初診されました。何度も症状を繰り返しており、ぜんそくが隠れていることは明らかでした。しかし、前医は「マイコプラズマは抗体が作られにくい」と説明し、マイコプラズマの治療を繰り返していました。私なら治療しても良くならなければ、自分の判断が間違っているのではないかと考え、治療を見直すと思います。ここ最近、上越で診療していてマイコプラズマの治療で“抗体が作られにくい”と判断したことはないからです。

見直しもせずに自分の判断を正当化しようとするのは、“裸の王様”と同じと言われても仕方ないと思います。結局、これは孤独な開業医を象徴しているのでしょう。「これはマイコプラズマでなく、ぜんそくが隠れていますよ」と誰も教えてくれないのです。患者さんがしびれを切らして、医院を代えなければ分からなかったことなのです。

学会の中で、食物アレルギーのお子さんの食事制限が厳し過ぎて、“くる病”という栄養障害を起こしたという報告がありました。当院は重症な食物アレルギーの患者さんが多いので、「こんなことも起こり得るから気をつけないといけないな」と思いました。司会の先生が発表された先生に「厳しい食事制限をした医師にくる病を発症したことは伝えましたか?」と質問したら「いえ、伝えていません」と答えていました。なかなか言いにくいことですよね。

同じような患者さんがまたその先生の元を受診すれば、また同じような指導がなされ、くる病を発症させてしまうかもしれないのです。マイコプラズマの件も同じことが言えるでしょうし、実際に小児科さんからそういう患者さんは多く受診されています。「治療してもよくならない」と紹介状を書いて下されば、「マイコプラズマでなく、ぜんそくでした」と返事を書きますが、開業医の中には紹介状を書きたがらない医師もいます。

開業医は口がうまければ、何とでもやっていけるんじゃないかと思っています。しかし、患者さんのために技術を磨かなければ、まともな医療はできないでしょう。開業医は孤独なため、「自分が間違った医療をしているのではないか?」と自らが危機感を持っていなければ、周囲の医療からも取り残されます。

「無知の知」という言葉あります。自分が知らないことが多いことを知らなければならないという意味です。今回、学会に行って自分の不勉強さを思い知らされました。かなり刺激を受けたので、学会の復習をしているところです。

日本の医療のおかしなところは、私がぜんそくと診断して治療してあっという間に改善してしまう方が、マイコプラズマと誤った治療をして点滴を繰り返すよりも収益が上がりません。正直者が馬鹿を見る、と言っても過言ではないと思いますが、かと言って私は間違ったことを繰り返したいとも思いません。小児科の診療を収入のためだけにやっている訳ではないからです。

先日、政府のやっている「事業仕分け」が話題になり、診療報酬の話も取り上げられました。開業医の収入が勤務医よりも多く、勤務医不足の昨今において、その辺の是正が必要ではないかという議論もありました。病院よりは開業医の方が軽症の患者が多く集まるという点もありますが、収入を考えて診療している開業医も少なくないことを表しているのだと思います。

こうやってみていくと、医療は開業医の良心に委ねられている部分が少なくないのだと気づきます。日本の医療を良くするのも、悪くするのも開業医の頑張り次第なのだろうと思っています。