我々小児科医の仕事は、子どもの健康を守ることです。そして、子どもを持つご家族が安心して日常生活できるようにサポートすることだと思います。
新型インフルエンザの予防接種が一段落し、若干新型インフルエンザの勢いが再び増しつつあるようですが、一時に比べればどの小児科も余裕のある診療をしているのだと思います。
当院の場合は、あまり楽になっていないようです。それは冬休みで一旦収束しかけたRSウィルスが増加に転じており、RSウィルスに関して説明することが沢山あり、時間がかかってしまうこともあります。
もうひとつは、最近アトピー性皮膚炎で初めて当院を受診される患者さんがとても多いことが挙げられます。どう聞きつけて来られたのか分かりませんが、市内からの他に市外からの受診が多いのです。驚いたことに、ほぼ100%アトピー性皮膚炎と診断されていません。いくつかの医療機関を渡り歩いて来られているにもかかわらずです。
必然的に、私の話すべきことが増えてきます。他の医院なら診察、説明(?)、処方で5分もかからないと思いますが、当院は充分説明した上で、乳児なら食事のことも話さなければならず、30分以上かかります。
敢えて言わせて頂きますが、患者さんはいろいろ受診しても良くならず、絶望して医療機関を替えるということを繰り返しています。医師への不信感も増大しています。その悪循環を「オレが止めてやろう」という気持ちで診療していますので、30分はあっという間に経ってしまうし、本当なら最初にかかった医師がやるべき仕事だと思っています。
湿疹の赤ちゃんが、あるアレルギー科を受診しました。アレルギー検査をしたら卵やミルクは陰性で、犬のフケが陽性でした。その医師はこれまで家族同然に暮らしていたイヌを、居間に入れるなと指示していました。
いきなりの指示に家族も困惑気味でしたが、一番驚いたのは犬でなかったかと思います。果たしてその“指示”は正しいのでしょうか?。
このお子さんもアトピーでしたが、アトピーと診断すらされていませんでした。治療もこれを塗るようにとアルメタというステロイド軟膏が出されていました。よくあることですが、診断もなく治療が進むことに違和感を覚えますし、ステロイドに対し警戒感を持っている患者さんもいらっしゃいます。アルメタを処方する必要性などにも言及すべきですが、特になかったようです。ただ、アレルギー検査が陽性だった犬を隔離するようにと強く言われたそうです。
アトピー性皮膚炎の悪化要因として食物が挙げられます。もちろん皮膚を悪化させるのなら、その食物は除去すべきです。しかし、アレルギー検査の値が高くても食べても皮膚炎が悪化しなければ、除去する必要があるのでしょうか?。悪化しなければ、その必要はありません。しなくていい除去を無理強いされるのなら、アレルギー検査はしない方がよかったということになると思います。
このお子さんの場合、犬についても同様のことが言えると思うのです。本当に犬が皮膚症状の悪化要因なのかどうか決まってもいないのに、犬のことをどうこう言うのはどうなのだろうかと思ってしまいます。
食べ物の時と同様に、まず一旦皮膚炎を落ち着かせる治療をして、それでもじきに皮膚症状が悪化してしまい、犬のフケが間違いなく足を引っ張っていることが明らかなら対処すべきことなのではないでしょうか?。当然、ご家族にとって犬より赤ちゃんの方が大事なはずですから、その時にはキチンと対処すべきでしょう。
ご家族にとっても、家族同然に暮らしてきた犬が悪いと一方的に言われては戸惑ってしまうし、人権侵害、いや犬権侵害になってしまいます。
ただし、犬アレルギーという病気もあります。犬に接触すると咳が出たり、鼻が出たり、目がかゆくなるがあります。まだ赤ちゃんですから、こういった症状が出るには早いと思いますが、犬アレルギーを発症する可能性があるでしょうから、こういう意味で犬との接触を少なくする指導はありかなと思います。
これらは専門でない先生にはやや難しいと思われ、専門医に紹介して頂くのが適切と思っています。そうしないと、同様の指導が繰り返されてしまいます。犬も含めたご家族にも必要以上に精神的負担はかけるべきではないと考えています。
患者さんである赤ちゃん、そしてご家族、更にペットである犬と、できればすべてが丸く収まるようにしたいし、しかも医学は科学なのだから“根拠”のある指導を心掛けるべきだと思っています。


