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アトピーの番組、観ました?
2010年02月02日 更新

先週の土曜の夜、たままたチャンネルを回していたら、教育テレビでアトピー性皮膚炎の番組をやっていました。子育てに関する番組で、アトピーの特集をしていたと言った方がいいでしょう。

番組の中で、東京在住のある患者さんのケースを紹介していました。

生後まもなく赤ちゃんの顔に湿疹が出始め、近くの小児科や皮膚科に行っても、「まだアトピーとは言えない」などと的確に診断もされず、ステロイドの塗り薬を出されるのみで、親御さんも不安な毎日を過ごしていたそうです。

ある日、食物アレルギーの症状を起こしたため、成育医療センターを受診したそうです。ここは、アレルギーの専門医のいる東京を代表するこども病院です。食物アレルギーの詳細は触れていませんでしたが、そこで初めて湿疹についてアトピー性皮膚炎と診断されたそうです。

当時の頃の写真も提示されましたが、私がみても一見してアトピーと判断されましたが、それまでかかっていた小児科や皮膚科では診断されなかったそうです。

最近、当院を初めて受診される患者さんのほとんどがアトピー性皮膚炎です。症状がみられてフレッシュな状態で来られる患者さんは少なく、ほとんどが既にいくつかの小児科、皮膚科で対応されています。

乳児湿疹、乾燥肌と診断され、ステロイドの軟膏が処方されており、今回の番組のケースと似ています。アトピーと的確に診断されずに、しかも出された薬を塗ってもよくならない。これは東京や新潟だけでなく、全国的によくみられる光景なのかもしれません。

先の患者さんですが、食物アレルギーで明らかな即時型反応を起こしたので、予想するにアレルギーの体質が強いのでしょう。往々にしてアトピーも重症のことが多いと思います。食物アレルギーで受診したのですが、そこでようやくアトピーの治療がスタートしたのです。

食物アレルギーで専門病院を受診しなければ、アトピーとも診断されず、適切な治療が開始されなかった可能性が高いと思っています。とても残念なことです。それまでにかかっていた小児科や皮膚科で治療してもよくならなかった訳ですから、なぜ前医がもう少し早く成育医療センターに紹介していなかったのかが不思議です。自分の思った診断、治療をして良くならないのをそのままのしておくのは医師として責任を果たしていないと思うからです。

とはいえ、当院に来られる患者さんも同様に誰一人として紹介状を持ってきません。「赤ちゃんにはよくあることだ」、「こんな湿疹、放っておいても治る」なんて言われているお子さんすらいます。周囲の赤ちゃんと比べてみても皮膚が普通じゃないと心配されているし、放っておいても治らないから親御さんは悩み、納得のいく医療をしてくれる医療機関を求めているのだと思うんですよね。

何はともあれ、成育医療センターでアトピー性皮膚炎の治療がスタートした訳ですが、親御さんとしては“ステロイド”に対する恐怖心があったそうです。恐怖心が邪魔をして、薬の塗り方も不十分であったり、途中で止めてしまったりしてしまうのです。そこは専門病院ですから、納得のいく説明があったため、ご夫婦の間で「信じて、きちんとやってみよう」ということになったそうです。

本当はその問題を取り除かない限り、アトピーの治療はスタートラインにも立てないと思っています。「なぜステロイドを使うか」、「どのように塗るか」、「副作用」などの説明すらなくポッと塗り薬が出されているケースがあまりにも多いのです。一時、社会問題にもなったステロイドを嫌う風潮は未だに根強い一方で、説明不足と言われても仕方ない医師の対応がクローズアップされてくると思います。

その患者さんは治療を始めて1年ほどになるそうですが、皮膚の状態も普通のお子さんと同じくらいで、特有のかゆみもほとんどないようです。保湿剤を主体に、時々ステロイド軟膏を使ってあげるくらいでコントロールされているそうです。

テレビの中で解説していた主治医の先生は日本の第一人者で、私も学会で先生のご講演は何度か聴いています。学会の時に少しお話しさせて頂いたこともありますし、私の今の治療のやり方も、その先生の影響を受けています。この先生の講演は、多くの小児科医に聴いて欲しいと思っています。いかにアトピーの湿疹を抑えるか、多くのヒントが含まれていると思います。診療を休みにしてでも学会に参加して、聴きにいくべきでしょう。

番組の中で、スキンケアや軟膏の塗り方も赤ちゃんの人形を使って説明されていました。特別なことをやっている訳ではなく、専門医なら誰でも知っている基本に忠実なやり方を実践してしていました。アトピーで困っている患者さんに観て欲しかったのですが、月曜の外来でアトピーの親御さん数人に聞いてみましたが、誰も観ていませんでした。残念です。

先にも述べた通り、アトピー性皮膚炎で当院を受診される患者さんは多いです。近頃は新型インフルエンザの患者さんが多くないので、新患の患者さんに一生懸命話しているとすぐに30分くらい経ってしまいます(汗)。アトピーの患者さん1人当たりに30分も説明する医院はそうそうないと思います。開業医は効率的に診療しなければならないことが多いため、近隣の医院さんも手間のかかる患者さんは紹介してくれた方が、お互いのためになると思うのですが…。

今回の教育テレビを観て、日本のアトピーの医療もまだまだだなと思いました。アトピーは慢性の病気で、皮膚症状が目に見えるため、医師としても誤摩化しがききません。重症で、専門医が専門的な治療をしなければならないようなケースでも、専門でない先生が過小治療されていることも少なくありません。治療してもよくならなければ、専門医へ紹介がスムーズに行われるようなシステム作りが急務なのだと感じています。