小児科 すこやかアレルギークリニック

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論より証拠
2010年02月23日 更新

先日の土曜日、市の休日夜間診療所の仕事がありました。

夕飯の時間帯を挟むため、休憩時間があるのですが、休憩している最中に待合室から気になる“ある音”がひっきりなしに聞こえてきます。

私はアレルギーの他に呼吸器にもこだわっているつもりです。この“音”とは小さな子の咳でした。本当にひっきりなしに咳き込んでいます。痰も絡んでいます。診察の時間が来たら、こんなことやあんなことを聞いてみようと考えていました。

あまりの咳き込みに看護師さんが、可哀想だからと診療開始を早めて診てもらえないかと言ってくれました。確かにあんな咳が一晩中続いたら、眠れないだろうし、相当に体力も消耗するはずです。「入院もあり得るな」と考えながら、診察室に向かいました。

過去の状況を問診してみると、咳が出やすく、強い咳込みは以前からあったようです。ただ、今回が最もひどいということでした。聴診器を当ててみると、泣いていてよく聞こえなかったので、お母さんにいつも通りに抱いてもらい、泣き止ませることにしました。赤ちゃんが泣いていると、肺の音はほとんど聞こえません。ここぞという時には泣き止ませてでも聴くべきですし、わずかな異常音も聴き逃すべきではありません。

そうしたら泣いている時には聞こえなかった、かすかなゼーゼーという音が聞こえます。呼吸の息を吐く時に聞こえるゼーゼーは、ぜんそくかRSウィルスなどの影響を考えなければなりません。過去の咳の状況を考えると、ぜんそくと診断すべきでした。

話を聞いてみると、比較的最近ここ上越市に引っ越してこられたそうです。アレルギー科の医院に行っていたようですが、ぜんそくとは診断されていませんでした。“気管支炎”と診断されていたそうです。気管支炎ではあまり吸入はしないと思うのですが、吸入もやったことがあるそうです。

本来、こういう方こそ、アレルギーと呼吸器にこだわった当院を受診して欲しいのですが、知名度に劣るため、当院にはまっすぐ来てくれないのがもどかしいところです(涙)。

私がぜんそくという診断名を告げると、怪訝そうな顔をされました。そりゃ気管支炎と診断されていたので、もっともなことなことだと思います。親御さんからすれば、ぜんそくという診断名は付けて欲しくない病名だと思います。だからこそ、逆にぜんそくがあると確信すれば、「気管支炎」や「ぜんそくっぽい」などという言い方はすべきではないのです。

休日夜間診療所に来た患者さんですので、私が診るのは最初で最後かもしれません。ぜんそくなのに、適切な治療をされなければ患者さんや親御さんが不憫でなりません。何とか診断をキチンと理解して頂かなければなりません。でも、私の診断を納得して頂くのに二つの秘策がありました。

ひとつは、気管支炎なら気管支炎の治療をすれば良くなるはずですよね?。親御さんは症状が良くならなかったため、何度も通院したとおっしゃっていました。気管支炎の治療をしても良くはならないのは、気管支炎じゃないからと考えると分かりやすいと思います。それに気付くことが大切です。

もうひとつは、吸入をやってみることです。ぜんそくがあれば、ぜんそくの治療としての吸入をやれば効果はあるはずです。果たして結果は…。

吸入後、診察室に戻って頂きました。最初は咳が残っていましたが、いろいろ説明しているうちに、あれだけ休む間もなく咳き込んでいたのに、ピタリと止まりました。親御さんもビックリしていました。あっという間に「論より証拠」を示すことができたと思います。でも何のことはない、ぜんそくの病態だから、吸入が有効だったのです。

以前、アレルギー科で吸入をしていたそうですから、実はその時にも吸入は有効だったはずです。もしかしたら、そういう目で見ていれば、ぜんそくの診断がその時点でついたかもしれず、折角の診断のチャンスを逃したのではないかと思っています。

医師によって診断が異なれば、患者さんは戸惑います。ましてや知名度の高い先生の言うことの方が正しいんじゃないかと思うのが世の常でしょう。この患者さんが今後どこの医療機関にかかるにしろ、ぜんそくと診断したからには、患者さんにとっては重いものだし、その言葉に責任を持たなければなりません。数少ないアレルギー専門医として「正しい診断、正しい治療」を広めるのが私の役目です。

充分説明し「論」も示しましたし、「証拠」も明らかにしました。ぜんそくであることを納得して頂きました。

ぜんそくは、他の病気と一緒で「早期発見、早期治療」が原則です。診断をキチンとつけて治療を速やかに開始しないと、重くなってしまうことがしばしばあります。吸入は有効でしたが、じきに効果が切れてまた途切れることのない咳込みが出てくる可能性が高いと思われました。何より酸素不足の状況になってきていました。親御さんは「子どもに最も良いことをしてあげたい」とおっしゃいましたので、ここは入院が確実な方法であると説明し、ご理解頂きました。

ぜんそくなのにぜんそくと診断されていないケースは意外と多いように思います。昨日は食物アレルギーの啓発が今年は一気に進みそうだと話しました。ぜんそくで困っている患者さん達も何とかしなければならない、そう思いました。ぜんそくのイベントもいずれ計画し、上越のレベルアップを図っていきたいと思っています。