少し前にも書きましたが、ここ最近当院にはアレルギー食指示書を持ってこられる患者さんがとても多いです。
この春、お子さんが小学校に上がるため、「学校生活管理指導表」の記入を希望して初めて当院を受診されるというケースがありました。
2歳の時に、カニを食べてまもなく皮膚症状が出たそうです。小児科を受診したようなのですが、状況からカニが原因だろうということになったようです。アレルギー検査も行わなかったそうです。
現在、6歳ですからこの4年間お母さんは一生懸命カニを除去していたそうです。園でも除去をお願いしていたのでしょうが、小学校に上がるに当たり、食物アレルギーを専門としている当院を受診して下さいました。どちらかというと「カニを除去する」という診断書が欲しいといった雰囲気でした。
一般的にカニは大人のアレルゲンでもあり、治りにくいアレルゲンと言っていいでしょう。親御さんもご存知だったようで、私がカニを除去して下さいと記入すれば、親御さんは納得するでしょう。しかし、私が納得しませんでした。
どういうことかと言いますと、「本当に除去し続ける必要があるのだろうか?」という疑問です。まず精査が行われていなかった訳ですから、「本当にカニアレルギーだったのだろうか?」という疑問もありますし、仮にそうだったとしても「もう治ったということは考えられないだろうか?」という疑問です。
しなくていい除去をするのは、お子さんがかわいそうですし、親御さんの他に学校側も毎日ピリピリしながら必死に除去をすることになると思います。食べられないと医師が決めつけることで、周囲が長い間迷惑を被るという構図がご理解できると思います。
昨日の感染症の話のように、ぜんそくをマイコプラズマと診断されていることもあります。先入観をなるべく排除し、冷静に診断を心掛けなければよい医療はできないと考えています。
カニで症状が出てから4年後の精査と言うことになるのですが、アレルギー検査は陰性でした。また専門医は血液検査とは別の見方のできるプリックテストという皮膚テストを行うことが多いのです。カニの皮膚テストも陰性でした。ということは、「カニが原因ではなかった」もしくは「カニで症状が出たが、現在は治っている」という可能性が高くなってきた訳です。
結局、カニで「食物負荷試験」を行うことになりました。もはやそれしか方法はないのです。実はお子さん自身はこの4年間とてもカニを食べたがっていたそうです。とてもかわいそうなことをしたと思っています。無駄に除去を続けてきた可能性が出てきたとも言える訳で、近々白黒をつけたいと思っています。
「万が一、重めの症状を起こしてしまったらどうしよう?」と思う気持ちもない訳ではありません。専門でなければ「除去を指示しておけば何も起きない」、「そこまでリスクを負う必要はない」という意見もあることでしょう。食物アレルギーの専門医は、自分の身を守ることよりは、正しい診断をしたいという気持ちが強いのだろうと思っています。
こういうケースは時々ある話だと思いますが、上越で開業して近隣から「食物負荷試験」の紹介はまずありません。私が食物アレルギーの専門でないなら、専門科に紹介状を書いて必要最小限の除去に抑えられるようにお願いすると思うのです。ここが当地では食物アレルギーの考え方が浸透しておらず、オーバーな除去をしている患者さんが少なくないことを表しているのだろうと思っています。
この時期、患者さんはかかりつけ医と信用して、アレルギー食指示書、学校生活管理指導表を持って受診されるでしょう。まず医師が前回書いた指示書を見直すことから始める必要があるだろうと思います。仮に1年ぶりなら、お子さんは1年成長し強くなっているはずです。見直さない方がおかしいはずです。親御さんも医師の言われた通りでなく、積極的に解除できるものがないが聞いてみて下さい。
今回のカニアレルギー疑いのお子さんがカニを食べたいにもかかわらず、一生食べられないとしたら誰の責任でしょうか?。親御さんはアレルギー症状を目の当たりにしているので恐くて食べさせられないはずです。結局、冷静に見直せるのは医師しかいないということにならないでしょうか?。


