小児科 すこやかアレルギークリニック

クリニックからのお知らせ

病院からのお知らせ

母の涙
2010年03月11日 更新

食物アレルギーのほかに、アトピー性皮膚炎もぜんそくも、マイコプラズマなどの感染症の診断でさえも正しく判断されていないことが少なくない現実を変えようと日々努力しているつもりです。

当院が開院して2年余り。必死に正しい診断、治療をと呼びかけても、そう簡単に変えられるものではありません。ホント、てこでも動かないって感じすらあります(涙)。逆にやり甲斐があると考えて、地道に進んでいこうと思うようにしています。

食物アレルギーにおいてアレルギー検査の値で食べられる、食べられないが判断されているのは、正しくないと言い続けています。未だにそう考えている医師が少なくなく、患者さんにとっても分かりやすいため、この考えを打ち砕くのは最も困難だと思います。

卵やミルクのIgE抗体が常にアレルギー反応に関与している訳ではなく、中には“無駄に作られている”お子さんもいて、数値は高いものの食べても何ともないお子さんもいらっしゃいます。「食物負荷試験」をやっている小児科医だけ持っている感覚だと思いますが、「これくらいなら少しは食べさせられるな」と考え、負荷試験の予定を立てています。

先日、お母さんがアレルギー検査の結果を聞きに受診されました。お母さんに渡す前に検査結果を見ると卵白4、小麦4、ピーナッツ2、大豆2…と陽性の項目がズラリと並んでいます。

母にとっては、子ども時代の通知表を見るよりもドキドキするものだと思います。悪ければ、自分の責任だと落ち込んでしまう方もいらっしゃいます。数秒、検査結果を見入った後、大粒の涙が頬を伝いました。第一声は「よかった」というものでした。

実は、当院でも重症な部類の患者さんでした。かつての検査結果は5や6が並んでいました。普通なら「こんなに悪いんだ」とガッカリするような結果なのに、感激の涙がこぼれてしまったのです。

以前から当院にかかっている患者さんで、何度か「食物負荷試験」も行っています。負荷試験の時に蕁麻疹が出てしまったこともあります。先ほど、検査の数値は正しいとは限らないといいましたが、このお子さんは数値も高く、症状も誘発されてしまうのです。除去する食品も多く、人一倍苦労されてきたのです。

大豆の検査は陽性でも、豆腐や納豆は食べられています。いま園に通っていますが、除去する品目が多いので、食べられるものは園でも食べさせてよいとお願いもしていました。しかし、重症なお子さんは園でも「何かあると困る」と豆腐を出してもらっていませんでした。お母さんは何度か掛け合っても認めてもらえなかったそうです。お母さんの涙の理由は、こんなところにもあったのだと思います。

園の先生も素人ですから、その対応も分からなくもありませが、怖がってばかりで何も食べさせられない方がお子さんにとって不幸でしょう。重症なお子さんは難しいですが、物心がつく前に食べさせたいと思っています。私の指導不足もあるのでしょうが、何度も食べて何ともないものは数値が高くても大丈夫だと園側にも働きかけていく必要があると思います。

このお子さんは卵白4、小麦4だった訳ですが、以前のクラス6よりは付け入るスキが出てきたと思っています。以前も触れましたが、小麦が摂れないのはネックです。どういうことかと言いますと、パンやうどんなどの麺類といった主食が摂れないのは負担が何かと大きいのです。より重症ならビスケットやクッキーも食べられません。

一般小児科なら、卵も小麦も除去を続けるところかもしれませんが、クラス4でも「食物負荷試験」に挑戦したいと思っています。母の涙に報いるためにも、一品でも二品でも食べられるものを増やしたいと思っています。

最近、園や学校で紹介されたと当院を初めて受診されるケースが増えています。私のやっていることが認められ始めている証拠だと思います。その中には長年食べてはいけないと周囲から言い続けられたため、精神的に受け付けなくなってしまっているケースも混じります。

除去を続けるよう指示するのは簡単で、医師の一言で済みます。オーバーめに除去しておけば何も起きませんが、一生食べられないきっかけを作ることにもなりかねないのです。その場合、医師の責任は重大です。もっと「食物負荷試験」の重要性が医師や親御さん、園•学校関係者に広まり、精神的に食べられなくなる子を減らせるように努力していかなければならないと思っています。