土曜の診療後に、当院に来客がありました。
NPO法人「アレルギー支援ネットワーク」の方々が、5月末に長岡市で行われるアレルギーのイベントの打ち合わせに来られたのです。
「アレルギー支援ネットワーク」さんでは「アレルギー大学」を開設しています。園や学校、食品メーカー、栄養士などアレルギーに興味を持つ人々にアレルギーに関する知識、調理技術など専門性を学ぶための「大学」です。本拠地は名古屋にありますので、愛知県では本格的に開催されており、岐阜県や静岡県でも始動しているそうです。私の友人の浜松の川田先生も講師として協力しています。
新潟県はアレルギーの対応が遅れていると繰り返しています。実際、新潟の地元の親御さん達の意見もあり、新潟のレベルアップのためのテコ入れに乗り出して下さったのです。
私も2年半前に上越の地で開院し、院内勉強会、すこやか健康フェア、講演など微力ながら食物アレルギーの正しい知識を持って頂こうと努力してきたつもりです。しかし、未だにアレルギー検査のみで食べられる食べられないの判断をしている医師、園関係者、親御さんが多く、私がどんなに声を大にして叫んでも、耳に届いていなかったようです。これは、私にとって大きな援軍です。というか、私個人の力は本当にちっぽけなので、「アレルギー支援ネットワーク」さんの活動に私が乗っかった、と言う方が正しいのかもしれません(汗)。
この活動は、地元の人間が中心となって盛り上げていくのが本来の姿であり、私も医師として、食物アレルギーの専門医としてエネルギーを注いでいきたいと思っています。
少し話がそれますが、卵料理を食べたら口の周りの湿疹が悪化したようだと患者さんがある小児科を受診したそうです。検査をしたら卵白がクラス6と強い反応を示していたそうです。その医師の指示は卵の完全除去でした。しかし、それまで卵焼きなどは食べていたのです。急に卵が食べられないことになり、不安になって当院を受診されました。
日頃の食生活をお聞きすると、何度も卵料理は食べていたそうです。卵白がクラス6なら、卵焼きが食べられないケースが多いと思いますので、話としては不可解です。その医院で調べた検査結果を見せてもらおうと思ったのですが、紛失してしまったそうです。卵がクラス6なら、他の食品も陽性である可能性があるので、お子さんにはかわいそうですが、アレルギーを起こしやすい項目を選んで再検査させて頂きました。
結果を見てビックリです。卵白の値はクラス6でなく、2でした。これなら卵料理を食べていたのも納得できます。クラス2でも卵料理の除去を指示する小児科医は多いと思いますが、私は「食物負荷試験」で食べられるか確認しています。確率的にも食べられる可能性は高いのです。
アレルギー検査が、たったの数週間で6から2に下がることはまずありません。その子の検査結果が手元にないので、確認できません。前の先生に失礼な言い方になるかもしれませんが、違う患者さんのデータだったのかもという疑惑さえ浮かんでしまいます。この問題がどうして起きたかを考えても全てが推測になってしまいます。
ただ、問題が残りました。食べていたはずの卵焼きをご家族が怖がって食べさせられなくなったことです。
「食物負荷試験」は、食べられるようになったかを確認する検査ですが、今回のように自信をなくしてしまった患者さんが食べられるかを確認することもできます。先日、「食物負荷試験」を行いましたが、何の問題もなく食べられましたし、その後も家で食べているそうです。やっと元の食生活に戻れた訳です。
私なら仮に当院の検査でも同様にクラス6であっても、「食物負荷試験」をやっていたと思います。別に自分の興味本位という意味ではなく、実際に問題なく食べていたのですから、元通りに戻してあげる必要があると思っています。今回はやや特殊なケースかもしれませんが、食物アレルギーの知識がしっかりしていれば、私のような対応をする小児科医も他にもいると思います。
新潟県だけでなく、世の中にはアレルギー検査だけで食べられないと判断されている患者さんが圧倒的に多いと思いますし、今回のように食べてたものを「食べてはいけない」と除去を指示されるケースもあるのだろうと思います。成長期のお子さんのことを考えると、「アレルギー検査だけでは何も言えない」という考えが広まるべきでしょう。
アレルギーの正しい知識を求めているのは、親御さんだけでなく、食品業界、子どもを扱う職種の方にも多いと思います。アレルギーを学ぶ機会が与えられ新潟で根付けば、アレルギー検査のみで判断している医師が減るはずです。「食物負荷試験」を行う小児科医も増えるかもしれませんし、「食物負荷試験」のノウハウを持った医師に紹介するシステムができあがるかもしれません。
「食物アレルギーの正しい知識を広めたい」という熱い思いを持っているのは私だけでなく、県外には「アレルギー支援ネットワーク」さんのように精力的に、そして本格的にやられている方々もいらっしゃるのです。他にも親の会や患者会なども知っています。ここ新潟県においても、時代は確実に動いています。
今回、「アレルギー支援ネットワーク」さんのご支援を受け、長岡で食物アレルギーのシンポジウムが行われます。これを皮切りに、新潟県の食物アレルギーのレベルが少しでも向上してくれることを期待しています。もちろん、他力本願ではいけません。私も協力は惜しまないつもりですし、自力で啓発活動も続けていこうと思っています。


