小児科 すこやかアレルギークリニック

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敵が見えない
2010年03月23日 更新

「もしかして、薬を使っていないんじゃないかな」と恐る恐る聞いてみると、「はい」という答え。

昨日お話ししたアドエアを処方されていた患者さんは、実はほとんど使っていませんでした。風邪を引いて息苦しくなったり、運動してゼーゼー言っても我慢していたそうです。折角、“究極”のぜんそくの薬を出してもらっていたにもかかわらずです。

なぜ私が患者さんがアドエアを使っていないことに気付いたかと言いますと、「肺機能検査」の結果が悪かったからです。

「肺機能検査」は、ぜんそくの管理において欠かすことのできない検査です。私がこの場でよく触れている「ガイドライン」にも「肺機能検査」が正常であることを確認するようにと明記されているにもかかわらず、新潟県内ではほとんど行われていません。私もこの検査を今回の患者さんにやっていなければ気付かなかったかもしれません。

ぜんそくの重い患者さんは、いつでも発作を起こすように身構えている状況と言っていいでしょう。こういう患者さんに「肺機能検査」を行うと、特に気管支の細い部分で異常値になります。もしアドエアを継続していれば、「肺機能検査」は改善しているはずです。それがなかったものですから、「アドエアを使っていなかったのではないか?」という疑問が浮かんだのです。

この患者さんも、いわゆる“犠牲者”と言っていいと思っています。受けるべきであったぜんそくの教育をキチンと受けていなかったという点においてです。小さい頃からぜんそくの典型的な症状を繰り返していたにもかかわらず、かかっていた小児科医に「ぜんそくっぽい」と言われ、継続的な治療がなされていませんでした。当然、患者さんも親御さんも「ぜんそくではないんだな。いつか治るんだろう。」と思っていらっしゃったと思います。

ところが、大きくなるにつれて、ゼーゼーはしにくくなっても咳はとても出やすい状態でした。1年前から夜間のひどい咳に悩まされ、近医内科でまた「ぜんそくっぽい」と言われ、アドエアが出されていたのです。

かれこれ1年も通っていたのですが、親御さんは1ヶ月ごとにお子さんを連れて通院していました。当然アドエアは使っていると思いきや、患者さんの話では使っていなかったそうです。症状が出ても、我慢すればじきに改善するので、薬を連用する意味が説明されていなかったので、まだ子どもでもあるため、理解していなかったのです。

もともと当院を受診されたきっかけは、アトピー性皮膚炎の相談だったそうですが、アトピーは軽い状況で、ぜんそくの方がよっぽど重症でした。このままでは間違いなく大人になっても発作を繰り返します。それを阻止する努力は不可欠です。

申し訳ないですが、この患者さんに関して言えば、私なら10年前からぜんそくと診断できる状況でした。慢性疾患は的確に診断し、適切に治療しないと大人に持ち越す可能性があります。中途半端な診断と、中途半端な治療は最も避けなければならないことです。

患者さんと親御さんは悪くありません。今回の最大のポイントは、患者さんも小さい頃からかかわっていた医師も「敵が見えていなかった」ことにあります。

日頃、診療していると「ぜんそくっぽい」と言われて中途半端な治療をされているケースを時々経験します。上越は、特に当院のある直江津方面は、慢性の病気を急性疾患と捉えられていることが少なくないように思います。

ぜんそくの典型例は1歳で発症し、治るとしたら12~3歳ころが多いとされます。しかし、現在は5割程度しか治癒が望めないとされています。先のような指導を続けてこられると、患者さん自身も症状が治まると治療を継続する意味を見出せないと思います。

ぜんそくの重めの患者さんは継続治療をして、発作を抑え込むことで初めて「治る」という土俵に立てると言っていいでしょう。ぜんそくという診断すら付いていない患者さんも大勢いらっしゃるし、仮に診断されていても、ぜんそくを甘く捉えている患者さんが少なくないのが気になっています。

これは医師の教育不足に依るところが小さくないと思います。当院では、ぜんそくと診断すると長めに時間を取って説明しています。患者教育にも力を入れているつもりですが、あまりそういう土壌のないところにぜんそくの治療を根付かせるのは大変な作業です。

最近、食物アレルギーを心配して当院を初診する患者さんが増えました。園や学校で「食べられるかどうか調べてもらってきて下さい」と当院への受診を勧めて下さるケースも多いようです。これと同じようにぜんそくという慢性疾患の管理についても啓発を広めていかなければならないと責任の大きさを痛感しています。