小児科 すこやかアレルギークリニック

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理解不足により
2010年03月29日 更新

新年度が始まるためだと思いますが、最近は食物アレルギーの患者さんが多いです。

その中に周囲の理解不足で苦しめられている患者さんがいました。私の地元にまだこんな患者さんはいるんだと驚きましたし、まだいるであろう似たような対応をされている患者さんを救わなければならない、そう思っています。

その患者さんは卵とミルクアレルギーがありました。更に魚アレルギーがあり、園で魚を食べた直後に口の周りに蕁麻疹が出たことがあるそうです。そういった影響もあり、園での対応も厳しめになったという不運もあるのだろうと思います。

卵やミルクは血液検査が高かったため、除去していたようです。以前は小麦も大豆、米も陽性でしたが、前医からは「食べるものがなくなるから食べていい」と指導されていたそうです。いえいえ、検査を重視している医師はそう言うのであって、食べて症状がでなければ食べていいのです。

小麦などの検査の値が陽性でも食べられるということは、卵やミルクについても同じことが言えるかもしれません。私なら加工品などで「食物負荷試験」を行うところですが、特に指導はなかったようです。有り得ない話というか、よくある話ですが、気の毒なことに親御さんが卵製品や乳製品を自宅で恐る恐る食べさせていたそうです。

今では卵の入ったチャーハンを少し食べても何とないそうです。ミルクについても牛乳を掛けたコーンフレークを少し食べられるそうです。専門医ならここまで食べられるなら、卵焼き1個、牛乳1本といった十分量の卵や乳を食べられるかどうか「食物負荷試験」を行い、卵アレルギー、ミルクアレルギーを卒業できたか確認するはずです。

あと一歩というところまで来ているのですから、早く親御さんに卵とミルクアレルギーのプレッシャーから解放してあげるのが小児科医の役目です。紹介状を書いて下されば、いくらでも負荷試験をしたと思います。その先生は当院が「食物負荷試験」をやっているのはご存知のはずなので、とても残念でなりません。結局、患者さんから自主的に当院を受診しなければ、適切な対応ができないということになってしまいます。

パンによっては中に卵が若干含まれているものがあります。そのお子さんは家でもパンは食べていましたので、お母さんは他の園児と一緒にパンを食べることを望んでいらっしゃいました。しかし、園の回答は「不可」だったそうです。

また、飲むヨーグルトってありますよね。家でも飲んでおり、親御さんはやはり園で飲むヨーグルトが出る時に飲ませて欲しいとお願いしたそうです。園の回答は「お母さんが付き添って飲ませて下さい」というものでした。泣く泣く給食に同伴したこともあったそうです。さすがの私も怒りを抑えきれませんでした。先のパンの話にしても、食物アレルギーの専門医から言わせて頂くと、有り得ない話です。地元の上越でこんなことが行われていることを恥ずかしく思います。

これは推測ですが、園側は親御さんのことを要求の多い親と捉えていると思うのです。最近はモンスターペアレントという過剰な要求を突きつける親もいると聞いています。親御さんからすれば、家で食べたり飲んだりして何ともないものを、園でも他の子ども達と一緒に食べさせたい、飲ませたいと考えるのは自然な発想です。その愛情に応えようとしなかった医師、園の対応は正しかったのだろうか?と思います。

おまけに、魚も完全除去を指示されたため、園側ではその指示に従うしかありません。重症な魚アレルギーのお子さんは魚のだし汁でも症状が誘発されることがあります。さすがにそこまで重くなく、家でもだし汁は使っていたにもかかわらず、医師の指示書に書いていないからと園に断られたそうです。

時間をかけて最初から話を聞いてきて、小児科医の書いた指示書が厳し過ぎて、そんなことが起こっていることに気付きました。園も親御さんから家庭での各食品の摂取状況を聞いていたにもかかわらず、医師の指示書の方を優先していたのでしょう。その医院の医師の指示が現実に即していなかったのが、今回の件の最も大きな要因と思われます。何か起こったら医師も責任を問われますから、自身の身を守ることも悪くはないですが、除去し過ぎれば栄養が偏り、お子さんも「なぜ僕だけ…」と子どもなりに辛い思いをしてしまうことでしょう。

私の感触では、アレルギー検査が陽性でもクラス2程度ですから、卵焼きも牛乳も摂取できる可能性がかなり高いと考えています。当院は当分の間「食物負荷試験」の予約がビッシリ入っているのですが、1日も早く負荷試験をやって、少なくとも卵と牛乳の除去を解除してあげたいと思っています。園も医師の指示を忠実に守っているのでしょうから、私がこれらの解除をすれば園での給食は、こと卵と牛乳については問題が解決し、除去の必要がなくなるはずです。給食に付き添わせるなんておかしな対応はもう二度として欲しくありません。

園も一度魚でアレルギー症状を起こしているのを見ており、だいぶ慎重な対応になっていたのも事実だろうと思います。家で使っているだし汁まで除去というのはやり過ぎです。サケは食べられるそうなので、どの魚が食べられ、どれが食べられないかと冷静に見極めなければなりません。皮膚テストや「食物負荷試験」で白黒とつけなければならないと思っています。

しかし、そんな時のよりどころは医師の指示書だと思います。多分園はその通りの対応をしていたと思います。となると、医師が実際の食生活に見合ったアレルギー診断書を書くべきでした。申し訳ないのですが、医師の指示書によってはこんな極端な対応になってしまいます。残念ながら、途中で当院に移ってこられたので、混乱を招いたことを気付いていないと思います。

「数値が高い」=「食べられない」と考えているとこんなことが起きてしまうのです。本来、いくつもアレルギー検査が陽性な患者さんは専門医に紹介することがガイドラインで推奨されています。しかし、ガイドラインを知っている医師しか、そういった内容を知らないと思います。結局、本人や周囲の方がアレルギー専門医を受診すべきだということに気付かなければ、何も変わらず、場合によっては有り得ないような対応をされてしまいかねません。 

今回の話を聞いて、やるせない気持ちになりました。この患者さん、親御さんには私がプロとして責任を持って対応させて頂きます。そう言ったところで母の目から大粒の涙がこぼれ落ちました。自分の訴えを理解してもらえず、さぞかし辛かっただろうと思います。医師の指示と園側の理解不足で、今回のようなやや極端な対応が生まれてしまうのだと思います。「お願いだから早く紹介して下さい」と言いたいのですが、過去にそういったことがなかったので、難しいと思います。

食物アレルギーを持つ子の親御さん達は、今回のような対応を普通だと思わないで頂きたいと思っています。親御さんも辛いが、お子さんの方がもっと不憫です。お子さんを守るのは、やはり親御さんだと言わざるを得ないケースもあるのだと思います。今の対応に少しでも疑問を感じている方は早めにご相談ください。