新型インフルエンザのほぼ見なくなり、感染性胃腸炎も減ってきている印象です。にもかかわらず忙しい日々を送っています。まだこんなにアレルギーで困っている患者さんがいるんだと思うくらい、新たに当院を受診されるケースが少なくありません。
アレルギーは慢性の病気なため、良くなったり悪くなったりを繰り返します。だからこそ、ぜんそくならぜんそく、アトピーならアトピーという診断が必要なのです。過小診断、過小治療を続けることは患者さんにとって失礼なことであり、患者さんの期待を裏切ることになります。
症状が良くならないにもかかわらず、同じ薬を出し続けられているケースをよく目にします。「良くしようとする気があるのかな?」と思ってしまいます。慢性疾患はいかに多くの対処法の引き出しを持つかが診療レベルの差になって現れると思います。
当院は土曜日はかなり混みます。どの小児科でも同じ現象かもしれませんが、ちょっと違うのが市外からの受診が多いということ。中越からも来られる患者さんも少なくありません。いろんな方々からここぞとばかりに様々な質問を受けるので、半日の診療なのに診察が終わるとぐったりになります。数ヶ月ぶりに院内勉強会を行いましたが、スケジュール的に土曜の午後しか時間が取れないのです。
私がそこまでして院内勉強会にこだわるのは、患者の親御さんに正しい知識を持って頂きたいからです。まず診断基準を示した上で、病気に関する基礎知識を知って頂きます。慢性疾患はいろいろな悪化要因があるのでそれを避ける努力も必要です。治療方針も説明しています。
今回、私にとって嬉しかったことは新顔がほとんどだったということ。これまでは常連さんの参加者が多かったのですが、今回はみな初めて参加の方だったようです。ほとんどの方がメモを片手にして聞いて下さいました。
テーマは「乳児のアトピー性皮膚炎と食物アレルギー」でした。親御さんにとって興味深い話ではないかと思って、選びました。ただ、ちょっと難しいテーマと言っていいでしょう。未だに小児科医と皮膚科医の間で意見の分かれるところですし、小児科医でもアレルギー専門か専門でないかで変わってきます。
厚生労働省の出している「食物アレルギーの診療の手引き2008」では、それをフローチャートで示し、医師の間の知識の差をなくそうとしています。しかし、上越ではこれに基づいて対応されている患者さんに会ったことがありません。
アレルギー検査で悪化要因のすべてが判定できる訳ではないので、それが皮膚炎を悪化させる要因になっているのかどうかを見極める努力が必要です。その診療の手引き(これもガイドライン)では除去試験、負荷試験について触れています。つまり、疑われるアレルゲンを除去して皮疹が改善するか、その状態で負荷してみて再度皮疹が悪化するかを確認する作業が必要になります。
ただし、その作業をする前に皮膚炎をコントロールしておくことが重要とされます。そりゃ当然です。皮膚炎が悪化したままの状態だと、何が悪化要因だか見出すことは困難です。食物の影響はずっとではなく、割りと一時的のことが多いと思いますし、そもそも皮膚炎は成長とともに軽快傾向にあるため、悪化要因が特定できないまま、治ってきてしまったということも少なくないと思います。
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係は微妙というか、繊細な目が求められると思います。正直、私も見極められていない部分もあると思っています。こういった微妙な部分をガイドラインに示すことはとても難しかったと思います。日本の第一人者の皮膚科の先生の協力を受け、小児科医と激しい議論の中、ようやく完成したと聞いています。
先日の院内勉強会ではそういった部分にも触れ、説明しました。ガイドラインは専門医のためだけのものではなく、非専門医のため、親御さんのためでもあるのです。ただ専門的に書かれているため、噛み砕いて説明すると親御さんも理解して頂けます。参加者は普通の小児科や皮膚科の先生よりも、この分野に関しては知識を身につけたのではないかと思うくらいです。
日本の第一人者の先生方が日本の医療レベルを向上させるために各種ガイドラインを作成しています。これはアレルギーの分野だけに限らない話です。しかし、少なくともアレルギーは、今回の食物アレルギーの関与する乳幼児アトピー性皮膚炎のようにガイドライン通りに診療している小児科医、皮膚科医があまりいないのではないかと思います。この分野に興味を持っている医師が少ないせいか、おざなりになっている気がしてなりません。
親御さんにとって自分のお子さんがガイドライン通りの適切な医療を受けているのかを知って頂くことは大切なことだと思っています。ガイドラインは親御さんのためのものでもあるため、これからも院内勉強会でそういったガイドラインの存在を知って頂き、内容も理解して頂く努力をしていきたいと考えています。それが地域の医療レベルを上げることにつながると信じています。


