当院は、申し訳ありませんが待ち時間が長いのは事実と言わざるを得ません。
アメリカでも医療保険制度医療が問題に上げられていますが、日本でも様々な問題を抱えていると思います。良心的にやればやるほど、時間も手間もかかります。しかし、今の日本の制度だと、一人当たりの時間と手間をかけない方が医院の利益が上がります。
患者が多く一人当たりに時間をかけられないという先生もいるでしょうが、例えば咳が長引いている場合、実はぜんそくが隠れていて、風邪じゃないから風邪薬が効いていないのにもかかわらず、同じ薬を出し続けられているケースも多々あります。スピード重視で、自分の治療を見直さないのは、何かがおかしいと思っています。
先日、ある患者さんが1年ぶりに当院を受診されました。その当時からぜんそくが隠れているのは分かっていました。その辺も説明していました。待ち時間が長かったからかどうかは分かりませんが、その後市内の医院を転々とされていたようです。最初に行ったところでは、風邪やマイコプラズマと言われていたようです。すぐ点滴に頼るようで、じきに行かなくなったそうです。次では「ぜんそくっぽい」と言われていました。2週間ごとに薬をもらいに行っていたようです。
私がぜんそくが隠れているだろうと思って1年経ちますが、この1年でぜんそくと診断していい状態になっていました。私の認識では、ぜんそくの発作を起こしやすいお子さんがぜんそくの継続的治療をするはずだと理解しています。軽いぜんそくなら、良くなれば治療を一旦終了してもいいのではないかと思います。そこまで重くはない状況でした。
ただ、調子が悪いため当院を受診されたので、治療をさせて頂くことにしました。ぜんそくは熱の出る前日から咳が出ることがあります。翌日、熱が出て咳が増えたと再診されました。聴診上、ゼーゼーという音も聞こえなかったので吸入も必要ないと判断し、抗生剤を加えて、数日後に再診してもらった方がいいなと思いました。
その時に「こんな時は、前の先生は吸入も点滴もしてくれました」と言われました。薬を出して、そういった処置がないことに不満を持たれたようでした。上越では唯一の小児科でアレルギー専門医ですし、ぜんそく治療の心得はあるつもりです。吸入は、発作を起こして、ゼーゼーいって、呼吸困難のある時にする処置だと思います。今回、何らかの感染があり、咳も増えてきているくらいで、いわゆる発作とは違います。ましてや、ぜんそくですから、夜間に咳込みが増えると思いますが、診察時の日中に吸入しても夜まで効果が持続するものではありません。こんな状況は吸入の適応ではないと考えています。
最近は感染性胃腸炎が流行っており、立て続けに嘔吐を繰り返すお子さんに脱水を改善するための点滴をすることがあります。胃腸炎は進行が早いので、あっという間に脱水になるので、具合の悪くなったその日のうちに点滴が必要になります。胃腸炎以外の場合で、気道感染で熱が出た時に、当院では1日目で点滴をすることはまずありません。通常は脱水になっているとは思えず、抗生剤の内服で解熱することもあるため、点滴の適応だとも思っていません。
2年ほど前にどこかの整形外科で1日に何十人にも痛み止めの点滴を繰り返し、作り置きをしていたため菌が混入して、点滴を受けた患者さんが死亡するという事件がありました。点滴を沢山した方が医院にとっては利益が上がるのが事実なのは、この事件からも明らかです。しかし、私のポリシーとして無駄な点滴はしたくない、というのがあります。子どもが主体の小児科なんだから、子どもが嫌がる処置は「点滴をしない方がかわいそう」と思える時に限るべきでしょう。
親御さんの気持ちは分からなくはありませんが、水分も摂れて、おしっこも出ています。つまり脱水になっているとは考えられません。「抗生剤の点滴?」と思って、風邪のウィルスなら抗生剤を使う意味はないし、まず内服で様子を見るのが普通だと思います。正直言って、点滴をと言われて「自分の対応が間違っているのではないか?」と焦ってしまいました。冷静に考えてみて、吸入も点滴も必要ないと思いましたので、丁重にお断りました。
今回の状況と、前の先生が吸入や点滴をした状況が同じのかどうかはよく分かりません。ただ、親御さんの間で「点滴をしてもらえばよくなるもの」という風潮があるように思えてなりません。上越は“点滴待ち”というのがあるようです。点滴のスペースが何人分も確保されているのに、それ以上の人数が点滴が必要で、先に点滴したお子さんが終わるのを待っている状態を指すようです。当院ではこんな状況になったことが一度もありません。逆に、このお子さんの場合は、吸入も点滴もなしに症状を落ち着かせて、こういう時はこれらの処置をしなくても良くなることを証明しようかと思っています。
「前の先生は」に関して言えば、これは以前も書いたことがあるのですが、ぜんそくの大発作で呼吸不全の状況に陥っており、いきなりそんな状態で当院を受診されたので「これは入院の適応です」と話をしたら「前に行っていた○○医院さんでは点滴に通って治してもらった。納得できない。」と言われたことがあります。私の小児科人生の中でもショッキングな言葉でした。
そりゃ、お子さんが入院すれば家庭が大変です。ただし、お子さんがあまりにも重い発作を起こしているのに入院を避けるために、「頑張れ、頑張れ」では本末転倒です。そもそも低酸素に陥り、夜も一睡もできていない状況で入院させないのは、小児科医の常識が問われます。
「お母さんが夜、苦しいとか痛いとかでどうしようもなければ、救急病院に駆け込むでしょ?。場合によっては「頼むから入院させてくれ」ってことになるでしょう。」と言うと「そう言えばそうですね」と理解して下さいます。大発作で入院の適応にもかかわらず、朝晩点滴をして1週間も通院させる医師もいるようですが、私のよく言うガイドラインにはこういう方法は載っていません。ハッキリ言って我流の治療と言わざるを得ません。申し訳ないですが、親は助かっても、子どもは助かっているとは思えません。こんな場合は、子ども目線で冷静になって頂きたいのです。
アレルギー専門医として、地元に適正なアレルギー医療を根付かせていかなければならないと思っています。


