新年度が始まりました。
医師の世界でも診療報酬の改定がありました。その中で2年前、つまり前回の改訂の際に問題になった「5分ルール」がなくなりました。
患者さんの診察と説明に概ね5分かけキチンと対応するように、というものでした。2年前にはかなり反発の声もありました。大勢患者さんが受診する医院さんでは、誰一人として診療に5分もかけておらず、減益になると嘆いていました。
当院の場合は、説明をしているとあっという間に5分経ってしまいます。症状の落ち着いている患者さんは5分もかからないこともありますが、未だに新患の患者さんには20~30分かけることも少なくありません。心配性のお母さんは、あれもこれも聞きたいと矢継ぎ早に質問をしてくるケースもあります。それに応えるのが小児科医の役目。全員に5分もかけないと言うのは、私からすれば有り得ない話です。
先日、目やにが出るとかかりつけの患者さんが眼科を受診したそうです。目を診て、「これを注しておいて」と抗生剤とステロイドの点眼薬を2種類出されたそうです。実際の時間は分かりませんが、お母さんの話では「10秒くらいしかかかっていない」とおっしゃっていました。小児科でも、話が長くなると「次、次」と診察室を出て行くようにいう医師、それを誘導する看護師というようにそんな対応をしている医院もあると聞きます。
ある意味、羨ましいと思います。当院もそのスタイルで診療すれば、もっと待ち時間も短くなり、患者さんを多く診ることができるし、収入も上がることでしょう。でも何かが違いますよね?。医療って何だろうって思ってしまいます。
「5分」が診療時間として充分かどうかは議論のあるところでしょう。風邪なら1~2分で事足ります。しかし重症なアトピーやぜんそくなら絶対に5分では足りません。病気によって分ける必要が出てきそうです。「慢性疾患の場合は10分以上かけること」、なんて方が良かったかもしれません。
ただ、ゼーゼーを繰り返しても“風邪”、アトピーがひどいのに“乳児湿疹”と診断している医師もいます。彼らに取ってはぜんそく、アトピーでさえ風邪のような急性疾患になってしまっています。結局、医療を一括りにできないのでしょう。
専門医はゼーゼー繰り返していれば、ぜんそくと診断します。発作の頻度が高ければ、予防する必要があり、治療を継続する必要があります。「どうせ治る」と言っている医師もいますが、決して甘く見るべきではないでしょう。その辺の注意点もあります。また乳児湿疹ではなく、アトピーと診断されたら悪化要因は何か、どう治療してどう管理していくか、ステロイド軟膏の説明などあっという間に10分、20分はかかってしまいます。その間に“風邪”、“乳児湿疹”と診断した医師は、その後に5人、10人と患者さんを診ることができてしまいます。
私はアレルギーが専門のため、“風邪”、“乳児湿疹”と正しく診断されていない場合は「オレが何とかしなければ」と思います。こういった慢性疾患は症状が良くならないと、ドクターショッピングと言って様々な医療機関を渡り歩く患者さんが少なくありません。私も同じ対応をしたら、その患者さんは本当に救われません。
先日、某県の県庁所在地の市から患者さんが来られました。上越に実家があるので、戻っている時に寄って下さったそうです。たまたま立て続けに2人のお子さんが受診されました。共通点は、2人とも咳が長引くということでした。お薬手帳を見れば、どんな薬を出されているか分かりますが、いずれもぜんそくの薬が出されていました。特に一方の親御さんは、薬の説明を見てぜんそくの薬が処方されており、ビックリしたそうです。全く説明はなかったからです。
どちらも結構混んでいる医院さんのようですが、医師はキチンと説明すべきです。いや、なぜ説明しないのだろうと思います。一方の患者さんはアトピーもあり、見逃されていました。その辺も含めて説明したら、「こんなに説明してもらったのは初めてです」と言われました。
「5分ルール」が撤廃されたのは現状からすると仕方ないのかもしれません。ただ、「なるべく5分くらいかけよう」と思っていた医師が、撤廃されたのを契機に足かせがなくなったと思うとしたら良い方向に行かない気もします。
個人的には、いつも言っている通り、過小診断、過小治療で良くならない患者さんを専門医の紹介するというシステムが確立するだけで、子どものアレルギー医療はかなり改善すると思います。でも、それが難しいんですよね。
アレルギーの専門医は知識も技術も持っていて、時間をかけても患者さんの期待に応えようとしています。そういう専門医がもっと評価される時代が来て欲しいと思っています。


