当院は「本物」にこだわっているつもりです。
春休み、夏休みは土曜の午後は「気道過敏性試験」をやっています。何度も触れているので、ご理解頂いている方も多いと思いますが、ぜんそくの評価には欠かせない検査でです。
普通の人の気管支は、いい意味で“鈍感”なので咳はしづらいのですが、ぜんそくの患者さんは気管支が“過敏”なので、すぐにゼーゼー、ヒューヒューいってしまうのです。つまりぜんそくの患者さんは「気道過敏性」といって、気道(気管支)が過敏な状態が持続しています。
ぜんそく治療のコツは、この「気道過敏性」をなくす努力をすることと言っても過言ではないと思います。「気道過敏性」はすぐにはなくならないので、ぜんそくのお子さんはゼーゼーを繰り返すのです。発作を起こしやすいお子さんは、内服や吸入ステロイドを継続的に使用することで、発作を起こしにくい状態を長期間続けることによって、初めて「気道過敏性」を低下させることができるのです。
この「気道過敏性試験」は私がよく書いている「食物負荷試験」よりもやっている施設は全国的に少ないと思います。以前も触れましたが、アレルギーに力を入れいている大学のある某県では、大学病院しかこの検査をやっていないそうです。開業医でやっているとなると、全国的にもかなり少数だと思います。ぜんそく患者さんはかなりの頻度で存在していますので、本当はもっと多くの病院や開業医で行うべき検査だと思っています。
ぜんそくは「大きくなれば治る」と言っている小児科医も大勢いますが、決してそうではありません。5~6割と言われており、標準的なケースで発症は1歳、治る場合は12~13歳が多いとされます。ただでさえ10年以上の経過があります。重症なお子さんほど、大人に持ち越す可能性が高いのです。
ただ、皆がすごく重症ではないので、中くらいに重いお子さんは治療をしていると症状は安定してきます。吸入ステロイドを使用している場合は、早く止めて悪化してしまうのも恐いけれど、ダラダラと続けることも避けなければなりません。一般的には2年間の無発作を作ることが大切と言われています。
先週の土曜も大勢患者さんが受診されましたが、その後にほとんど休む間もなく、私の長年診てきたぜんそく患者さんの「気道過敏性試験」を行いました。
その患者さんは10歳ほどになっていますが、園児の頃からの付き合いです。私の前の勤務先時代からの診ていました。結構、重いお子さんで、時々入退院を繰り返していました。最初は内服の抗アレルギー薬で治療していたのですが、秋などに風邪を引くと重めの発作を起こしていたので、その都度入院加療を行ってきました。年長さんの秋の発作入院をきっかけに、治療を強化し吸入ステロイドを開始させて頂きました。
「もう少し早く吸入ステロイドを使っておけば良かった」とのちに反省することになるのですが、その後はピタリと発作が止まり、小学校に上がった後も親御さんから「1年生は1日も休みませんでした」との嬉しい報告もして頂いていました。
ちょっと調子がいいと治療を止めたくなるのは人間の常。当院でも治療を止めては発作を起こし慌てて受診されるケースはあります。ぜんそくの治療にはキチンとした理解と地道な努力が必要です。この親御さんはとても真面目な方で、私の説明をしっかりと理解し、私が上越に移って開業しても、通い続けて下さいました。
2年間の無発作を確認し、吸入ステロイドを減量することにしました。ぶり返して、また治療のし直しになると困るので、ゆっくり減量し、恐る恐る中止しても発作を再び起こすことはありませんでした。抗アレルギー薬の内服だけにすることができました。
この患者さんを治療する上で、吸入ステロイドや欠かすことはできなかったのは明らかです。そして、頑張って治療を継続し、吸入ステロイドを止めても発作はぶり返しませんでした。ぜんそくの治療をいつ止めるかは判断が難しいところです。
それを知りたいがために「気道過敏性試験」を行いました。長年、私を信用して通院してくれた患者さんを「そろそろ止めていいだろう」なんてアバウトな感覚で治療を止めるのも失礼だと思います。キチンと根拠のあることをやらなければならないと思うのです。
「気道過敏性試験」は発作を起こしやすい薬を徐々に濃くして吸入し、途中で発作を起こせば、また気管支は過敏であると判断します。「食物負荷試験」と同じ考え方です。具体的には10種類の濃度の薬を吸入してもらいます。6本目くらいでたまに咳が出ていましたので、「最後までは厳しいだろう」と内心思っていました。検査結果が今一歩なら治療を止める訳にはいきません。
ところがどっこい、最後まで行けて、この「気道過敏性試験」をクリアしたのです。幼稚園の頃からずっと私が診てきて、当然ですが治療の強化や減量もすべて自分で判断し、熱意を込めて治療してきた患者さんです。結構重かったので「治療を本当に止めていいの?」という気持ちもなくはありませんが、白黒つけるために「気道過敏性試験」を行ったのです。治療を止めても、誰からも文句はつけられないと思います。
何か照れくさくて「おめでとう!」とは言えなかったけれど(汗)、本当に良かったです。ただ、これでぜんそくが治った訳ではありません。今は“寛解”した状態です。ぜんそくはガンと同じように、治療を止めて5年再発しなかったら、ようやく“治癒”と言えます。年に2回ほど、その半年ごとの状況を教えて頂き、本当に“治癒”するのか見極めたいと思います。
最近は、アレルギーの専門家でなくても結構気軽に吸入ステロイドを処方されているケースもあるようです。しかし、吸入ステロイドを早期に使ってもぜんそくは治らない、というのが専門医の間での認識になっています。正直なところ、極めて重症な患者さんは、専門医がしっかりと治療しても治癒は難しいのだろうと思います。
この患者さんの場合は、最重症ではありませんが、決して軽くもありませんでした。私もそれなりに苦労しながらずっと責任を持って診てきたつもりです。それがこうやって「気道過敏性試験」をクリアして、晴れて治療を止めていいと言うことになると、諦めずに努力を続ければ、重くてもぜんそくは治すことができる可能性が高まると言っていいのかもしれません。もちろん親御さんは喜んでいましたが、今後私がかかわるであろう重症なぜんそく患者さんにとっても励みにもなるのだと思います。
上越では日頃診療していると、ぜんそくは発作時しか治療していない患者さんもそれなりに見受けます。同じ患者さんを診ても、アレルギーが専門かどうかで、医師の治療も大幅に変わってしまいます。それで半分が大人に持ち越すと考えると、ある程度重い患者さんはアレルギー専門医が診るべきなのではないかと思うのです。ご心配な方は早めにご相談頂けたらと思っています。


